苦悩16 涼ちゃんはそれ以上何も聞いてはこなかった。 それよりも、家に着くまでの間ずっと…すずちゃんの可愛さについて熱く語っていたのが可笑しくて仕方なかったから、あたしの涙は家の前に辿り着く頃には乾いていて、涼ちゃんと笑って手を振り合うこともできた。 (そうだよね。ちゃんと翔と話せばいいんだよね…。タオル…綺麗に洗って返さなきゃ) ガチャ… 涼ちゃんのおかげか…少し軽くなった気持ちでいつも通りに玄関扉を開ける。 パパもママももう寝ているのか、家の中は真っ暗で…途端になんだか寂しくなった。 暗がりの中なんとか靴を脱いで、自分の部屋へ向かおうと階段を上りかけたとき。リビングに明かりが灯った。 (…ママかな) 階段の手すりにかけた手を戻し、リビングへと行き先を変更する。そして、リビングの扉を開くと… 華 「ん?…おぉ、帰ったか」 ミネラルウォーターのペットボトルとグラスを手にしたパジャマ姿のママは、あたしに気づいて満面の笑顔をくれた。 その笑顔を見た途端。 あたしの目から一気に涙が溢れ出す。 華 「は!?え!?」 一舞 「…ふっ」 終には立っていられなくなり、その場にうずくまった。 再び溢れ出した涙。 同時に襲う息苦しさは悲しさからなのか、迷いからなのか。 張り裂けそうに痛む胸は同情か、それとも嫉妬なのか。 あたしはいったい、どうしたらいいんだろう。 何もかも解ってあげられない。あたしには何もかもが足りなすぎる。 襲い来る感情の答えも解らず、ただ泣くことしか出来ない自分が… (許せないよ…) Novel☆top← 書斎← Home← |