苦悩14




―――――――side 祐弥

 深夜0時過ぎ。

 なんやかんや、めぐちゃんの送りを終えて、俺も帰路につく。


 それにしても、コッチ来てからはなんや忙しない日常やな…。

 みんなと仲良うなれたんはええことやけど、一舞に手ぇ出してもうてちょっとだけ死にかけたりしたしな。

 あれはホンマ恐ろしかった。ガチで魘されたっちゅーねん。


(…せやけどなんで一舞にあんな事してしもたんや俺?)


 思い出してみても未だに答えは出てきてはくれん。考えてもしゃーない言うことか。


(つーかそれもアレやけど…)


 さっきの一舞も気になる。

 親父の件で見せた顔とはまたちゃう感じの、辛そうな顔しとった…。

 慎一も綾も俺をからかっとったけど、そんな場合とちゃうやんか。


祐弥
「…はぁ」


 気になりすぎて頭おかしなりそうや。

 なんでこんなに一舞の事ばっかり考えよるんか自分でもわからんし、わからんことが気持ち悪いねん…。





 自宅に向かって進んどったはずの足は、俺の意志か無意識か店の方へ向き直り。気ぃつけば走っとるし。


(俺は長距離苦手やねんて。どこまで走る気や)


 心の中で何度も1人突っ込みを繰り返しながら、足を止めることもでけへんくって…いつの間にやら店の前も通り過ぎて、たぶんこれは一舞の居るらしい方向に向かってるんやなと目的地を予想し始める。


(行ってどうすんねん。彼氏に任しといたらええやんか。次は殺されんで…)


 ほんであの彼氏や。マジで男前やったな…。

 シュッとして、メンズナントカとか言う雑誌にでも出てきそうな感じやったし。同じ人間やのにまるで別次元の人や。悪魔みたい顔しとっても造り物みたいに綺麗やった。


(…あんなんに勝てるんかな)





祐弥
「……」






(……?)






祐弥
「は!?勝つ気か!」


 思わず足が止まった。


(いやいや俺や!何を考えとんねん!)


 ゼェゼェと荒いままの呼吸。胸が苦しいんは走ったからや。そう自分を納得させようとすればするほど俺の中に芽生えたソレは、どんどん勢いを増して俺の心を浸食していきよる。


(ホンマ…アカンて…)





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