苦悩11 妙に遠慮がちに。いつもより数段小さな声で学ちゃんの口から零れた第一声…それは。 学 「…翔、のことなんだけどな」 一舞 「…うん…翔がどうしたの?」 学 「…」 一舞 「…」 学 「……」 一舞 「……」 学 「………」 一舞 「………はやく言いな」 学 「や……やめねーか?」 一舞 「…」 (いったい何を言い出すのかと思ったら…別れろってことですか) 一舞 「…どうしてそんな事言うの?」 学 「………つーかな?…なんつーか………お前には悪いけど、この先の事が心配なんだよ俺は」 何時になく真剣に、穏やかに…言葉を選びながら話す様子に、それが間違った言葉だとわかって言っていることに、少し苛立ちが過る。 翔とあたしが付き合っていることがどうしてそんなに心配なのか理解できない。翔もあたしも、何も心配されるような事はしていないのだから。 一舞 「…今さら何言ってんの?」 学 「………」 一舞 「夏休みの合宿で、あたしと翔が付き合うって決めた時…翔は学ちゃんに報告に行ったんだよね?」 学 「………」 一舞 「そんで学ちゃんは、翔を殴ったんだよね?」 学 「…………」 一舞 「…あれは、殴る代わりに認めてくれたって意味じゃなかったっけ?」 学 「…………あぁ」 一舞 「だったら、今になってそんな事言うのはおかしくない?」 学 「……………」 一舞 「…あたしは別れないよ」 学 「……………」 一舞 「…別れないから」 学 「…まぁ…そういう結論になるわな」 学ちゃんは、深いため息を1つ吐き出してうなだれた。そして、うなだれたまま話しを続ける。 学 「…お前の気持ちはわかった。けど…せめて、アイツの事をもう少し知ってくれ」 一舞 「…翔のこと?」 学 「そう。アイツの…昔の翔のこと」 一舞 「………」 正直言って、あたしにとって翔の過去は知らないことだらけだし、知りたいと思わないわけじゃない。 だけど。翔が話したくないなら知らなくてもいいかと、そう思っていた。 ハッキリ言って翔に対する不思議や疑問はいくつも存在しているし、気にしていたらキリが無いのだ。 例えば、今まで一度もご両親を見たことが無いとか。涼ちゃんが前に言ってた数年前の傷とか…。 学ちゃんはそれを…全て知ってるの? Novel☆top← 書斎← Home← |