苦悩8




(なんちゅーケアレスミスや!アホ慎!)


 2人して教室を慌てて飛び出し、とりあえず反対方向に向かった。これは敵を惑わすための作戦や。そして、互いに校内を急いで迂回して落ち合った階段下。打ち合わせも無しに出来るとはさすがや俺ら。


祐弥
「とか言うてる場合とちゃうやろしかし!」

慎一
「うあー…マジごめん。うっかり」

祐弥
「うっかりで済むか!つーかなんで知ってんねん」

慎一
「いや、なんとなく?」

祐弥
「はあ?」

慎一
「祐弥こそなんで知ってるの?」

祐弥
「それは、まぁ流れで?つーか何時わかってん?」

慎一
「何時わかったかなんてこの際どうでもいいじゃん。問題はどうやってめぐみを誤魔化すかだよ」

祐弥
「あー…まぁな…広夢はええとしても、めぐちゃんは意外と鋭いとこあるからなぁ…」

慎一
「そうそう。広夢なんか平気だけどね」

広夢
「聞こえてますが…」

祐弥
「あ、やっぱ居った」

慎一
「追っかけてくるなよ」


 撒いたとみせかけて実は追っ手にも気付いてましたよ作戦やで。

 階段下の俺らを手すりの影から見下ろしている広夢は、仲間外れが悔しいらしくワザとらしいふくれっ面。まったく可愛くないどころか軽くイラッと来るのはなんでや。


広夢
「で?結局誰なのさ」

慎一
「教えない」

広夢
「えーっ!?」

祐弥
「やかましいなもー…自分で突き止めろや」

慎一
「とにかく、バレるのはマズイからね」

祐弥
「いくらなんでもアカンやんな…お前、わかっても口外したらアカンで」

広夢
「うー…なんだよそんな面倒な相手なの?」

慎一
「ヒントは無し」

広夢
「…この際だからめぐみも含めた俺ら4人で秘密を共有するってのはどう?」

慎一
「却下」

祐弥
「ちょっとの油断が命取りやー言うやろ?でもまぁめぐちゃんにくらい教えてもええんちゃうかとは思うけどもやな…」

広夢
「なんで俺はだめなのさ!」

慎一
「めぐもダメ。まだ言っていい相手か判断しかねるから」

祐弥
「なんで?ええ子やん」

慎一
「…祐弥って意外に警戒心薄いよね」

祐弥
「そうかな…」

慎一
「一応同じ部員として付き合ってきたけど、まだよくわかんないんだよ、めぐみって」

広夢
「たとえば?」

慎一
「わかんないの?」

広夢
「うん」

慎一
「…まぁ少し様子見てな」

広夢
「まーた濁す!」

慎一
「だから少しは自分で考えなよ、ほんと面倒なんだから広夢は…」

祐弥
「それはそうと、ほんならどうすんの?」

慎一
「そうだな…じゃあ祐弥がなんとかして?」

祐弥
「え、俺が?」

慎一
「うん。興味を逸らす役割?」

祐弥
「えー…」

広夢
「良いんじゃない?俺の勘では、めぐみは祐弥のことラブだし」

祐弥
「…は?」

慎一
「…もうその言い方が気持ち悪い」

広夢
「あ、俺の勘を信用してないな?」

祐弥
「してへん」

広夢
「まったく…恋愛脳が幼稚園児並みの人はコレだから…」

祐弥
「なんやと?童貞が粋ってんちゃうぞコラ」

慎一
「まぁまぁ。こんなとこで喧嘩とかそんな暇無いし。とにかく俺も広夢には同感。だから頑張って口説き落としちゃえ」

祐弥
「はあー?なんでなーん!」

広夢
「口説いちゃえ!」

祐弥
「なんでそんなんせなアカンねん!アホか!」


 秘密を知ってしまった人間の宿命か、面倒な感じになってきたで…。

(てかなんで口説かなアカンねや…意味わからん)




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