苦悩7




―――――――――side 祐弥――――[軽音科2年教室]―――

広夢
「ホントなんだったんだろう…?」

祐弥
「…なにが?」


 ドタバタと問題だらけだった割には大成功だったライヴの翌日。

 珍しく悩んでいる様子の広夢が目の前で呟いた。


広夢
「なにがって、昨日オーナーが来たじゃん?」

祐弥
「…オーナーて、あのメッシュの兄ちゃん?」

広夢
「そう」

祐弥
「てかめっちゃ若いやんな。ビビった」

広夢
「そう?てか問題はそこじゃなくて、なんかスゲー優しかったから気持ちわりーなと思って」

祐弥
「は?…何言うてるん?優しいことはええことやんか」

めぐみ
「オーナーに限ってはソレ、怪奇現象だから」

祐弥
「お…なんや急に」


 今度は背後から、めぐちゃんの登場。広夢の言葉にそうだそうだと頷いている。


めぐみ
「バンド部ってさ…まぁ慎一の代に変わってから柔らかい感じにはなったけど、涼ちゃん先輩が部長の頃はオーナーが絶対君主の恐怖政治で、めちゃくちゃ縦の関係が厳しかったんだよ」

広夢
「そうそう、涼さん怖いの。俺なんか未だに目の敵だもん」

祐弥
「…涼さん?あんな可愛らしいのに?つーかめっちゃ優しいで?そんなん広夢がアホやからちゃん?」

広夢
「酷い!」

めぐみ
「まぁ広夢に関してはそうだけど」

広夢
「酷いよ!」

めぐみ
「てかそうじゃなくて、涼ちゃん先輩は基本的に怖いよ。それに輪をかけて恐ろしいのがオーナー」

広夢
「…女子でも容赦無いもんな」

めぐみ
「綾なんか今じゃオーナーの右腕みたいな感じだけど、入った頃はまだ中学生だったのに超スパルタな目に遭ってたからね」

祐弥
「へー…てか綾てなんやかんや特別待遇やな」

めぐみ
「オーナーの知り合いの娘なんだって。んでどうしても欲しいって言って無理に引っ張ったみたいよ」

祐弥
「ふうん…」


 俺はまだ入部して間もないルーキーやし、オーナーとかいう人に会ったのも昨夜が初やった。2人の言葉だけを聞けば、まったく先入観の無いところに次々と植えつけられる人物像はさも強烈な雰囲気を匂わせる。

 ましてや涼さんの事にまで恐怖心が及ぶとは思いもよらんかった。


(めっちゃ優しいんやけどなー…)


 まぁ確かに、オーナーが通ったあとには挙動のおかしい奴らが残ってた気もするけども…。


慎一
「だから一舞みたいなポジションって貴重なんだよ」

祐弥
「お…何時の間に…」

慎一
「ちょっとサボり。先生との会議って慣れない…」


 わざわざコッチのクラスに来てサボるのかと思いながらもその姿を確認すると、はぁ…と大きく溜息を吐いて机に突っ伏した。どうやら慎一も、昨夜の事については何か言いたいらしい。


広夢
「綾っち寝込まなかった?」

慎一
「知恵熱出すかと思うくらいショック受けてたよ。オーナーがおかしいのって、やっぱりアレかな…一舞とあの人がくっついちゃったからなのかな…」

祐弥
「…」

広夢
「え、慎って一舞の今カレ知ってんの?」

慎一
「…」





祐弥
「…(あほ)」
(言うたらアカンやん!)

めぐみ
「えー?初耳。てか涼ちゃん先輩と別れてからそんな経ってないよね?」

慎一
「…」

祐弥
「…」

広夢
「祐弥も黙ったってことは、お前も知ってんだな?」

祐弥
「…」

慎一
「……」

めぐみ
「どっちを吐かせようか?」

広夢
「めぐ、慎一の弱点ならよぉーく知ってるぜ」

めぐみ
「じゃあ慎一から!」

慎一
「あー!腹減ったなー!さて、次の仕事片づけよー!」

広夢
「おっ!?」

祐弥
「あ!俺も用事思い出した!あかんあかん早よ行かな!」

めぐみ
「ちょっと待ちな!」

広夢
「教えろよー!」

めぐみ
「二人とも誤魔化すなー!!」




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