赤髪9




―――――――side 翔

 放課後。

 自分の荷物を纏め、レコーディングに戻るため車に向かう。


(!?)


 職員玄関を出たところで、俺の視界に赤い髪がチラついた。

 慌てて赤い髪の方へ振り向くと…


祐弥
「お疲れっす…」


「……なんだ、お前か」


 とりあえず平静を装い、何の用だ?と視線を送る。


祐弥
「…ちょっと…話、いいっすか?」


「………内容によるな」

祐弥
「………彼女さんのことなんやけど」


「………」

祐弥
「出来れば………これから部活なんで、手短に話したいんす」


「………わかった…乗れ」

祐弥
「…失礼します」


 一舞のこととなると、ここで話すわけにいかない。俺はその赤髪の編入生を車に乗せ、店まで送りがてら話すことにした。


……………


………






 学校の敷地を出て、車が国道に乗ったあたりで、赤髪が話し始めた。


祐弥
「俺と一舞は、戸籍上は他人やけど、イトコです」


「…そうらしいな」

祐弥
「会うたのも話したのも初めてやったけど、俺はずっと、一舞と一緒に成長してきたような気持ちでおったんですよ」


「……」

祐弥
「せやけど、実際に会うてみたら環境が違うかって、嫉妬しました」


「………」

(いったい何の話だ?)


 淡々と語っているが、それを俺に話したからどうだというのか。まったく意図が掴めないな。


祐弥
「実は今日………一舞と2人で話したんすけど」


「……………」

祐弥
「……」


「……」

祐弥
「………すんません!」


「はっ!?」

(急に何だ!)


祐弥
「勝手に会いに来て、勝手に嫉妬して、粋がってましたけど、一舞、めっちゃエエ子でした」


「…そんなこと、わかってる」

祐弥
「エエ子やし、可愛いし、ちょっと荒いのもええ感じにギャップがあって…」


「………」

祐弥
「たぶん…魔が差したんやと、思うんす…」


「…………」

祐弥
「つい……」


「………」

祐弥
「キス…してしもて…」


  キキィーーーッ!!


祐弥
「わっ!?」


 感情に任せて踏んだブレーキペダル。

 甲高い摩擦音を響かせて急停車した車内では、前のめりになった隣の赤髪が、シートベルトに救われていた。



「…………なるほど」

祐弥
「…?」


「そんなことだろうとは思ってた」

祐弥
「…………」


「そうなんだ。ちょうど…俺が受け持ったクラスから見えたんだよな」

祐弥
「………」


「………」

祐弥
「…!!」


「お前、今…《つい》…って言ったな」

祐弥
「…は…い。言いました」


「…《つい》手ぇ出した経緯を…詳しく話せ」

祐弥
「!!」


「俺はそんなに大人じゃねーからな。場合によっちゃ………部活どころか家にも帰れねーぞ」

祐弥
「…は…はい…」


 自己申告か…。

 誰の差し金かくらい予想できるが、余計な事を…。


 こんなもん、黙って無かった事にすりゃいいんだ。


 改めて謝罪なんてされたら、小さかった火種が一気に燃え盛るじゃねーか。








(……さて、どうしてやろうか)




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