赤髪8 ―――――――side 一舞 〜♪ 一舞 「ん?」 気が付けばずいぶんと話し込んでいた。 5限まるまるサボって、もうすぐ6限目という時間。それを知らせるかのように着信音を響かせた携帯電話を、ジャラジャラとストラップの音を鳴らしながら手に取る。 祐弥 「・・・彼氏からちゃう?」 一舞 「んー、どうかな」 翔からのメールは、家政婦の絡みでしかもらったことが無いから、期待は薄い。 からかうような祐弥くんの言葉に、気の利いたセリフを返せなくて困っていると、続けざまに彼の携帯電話が着信を知らせた。 祐弥 「お?うわ、電話や。ちょ、ごめん」 一舞 「うん、じゃあまた部活でね」 祐弥 「おぉ」 慌てて電話に出る祐弥くんに手を振って、先に屋上を後にする。 あたしのケータイを鳴らしたのは香澄。 何時まで経っても戻ってこないあたしに痺れを切らしたらしい。 とりあえず、今戻ると返し、そして、とてつもなく翔が恋しくなって、彼にもメールを送った。 内容はいつも通り。 恋しいと思った時にしかメールしないし、返事は無いものだと思ってるから特に返信が必要な文章なんて書かない。 ただそうやって、寂しさを紛らわしているだけだから。 …あんなに毎日一緒に居たのに、付き合い始めた途端に自由に会うことも話すことも出来なくなるなんて淋しすぎる。 それでもワガママを言いたくないのは、単なる強がりじゃなくて…出会った頃、あんなに人との関わりを拒んでいた翔が、一生懸命頑張っているのを邪魔したく無い。そんな風に思うから。 ちゃんと待っていたいんだ。 予鈴の音を聞きながらザワザワとする廊下を自分のクラスに向かって歩く。 このままでは次の授業も遅刻しそうだけど、なんだか足が重い。 〜♪ 一舞 「ん!」 再び鳴った携帯電話。その着信音に驚いて慌ててポケットからケータイを取り出す。 久しぶりに聴く音。専用に設定してあった着うた。 翔から返信が来るのは初めてだ…。 急激な緊張感で膝が震える。 とにかく確認しなきゃと、廊下の途中で立ち止まり、窓枠にもたれて恐る恐るケータイを開いた。 ―――――――――――― 部活が終わったら部屋で待ってて ―――――――――――― 一舞 「…………!」 たったそれだけのメールでも、嬉しくて、心臓が信じられないくらいドキドキと脈打っている。 ドキドキして手がうまく動かないけど、とにかく了解の返信をして、呼吸を整えようとケータイを握りしめたまま深呼吸した。 合宿明けから…まともに2人で過ごす時間なんてほとんど無かった。 ましてや学校が終わればレコーディング場所に戻ってしまうこともわかっているから、この先も、2人の時間なんて期待は出来ないと思っていた。 (ど…どうしよう…!!) 久しぶりだし、何か手料理でも作ったほうがいいかな…とか。もしかしたら何か特別なことが起きたり?…とか。ウキウキと期待に胸を膨らませる自分が、とても新鮮だ。 自分の顔が、もしかしたら物凄くにやけてるかもしれないと思いながら、平然となんてしていられず。 スキップでもしそうな勢いで教室に戻った。 ![]() Novel☆top← 書斎← Home← |