赤髪6 ―――――――side 翔 (…何だ、今の?) 赤髪の塊が2つ。 教室の窓から見える、屋上のフェンスの向こうで重なった気がした。あのシルエットは、ほんの一瞬とは言えそうとしか思えなかった。 危うく落としかけた教科書をなんとか手元に残し、しかし窓の向こうから視線を逸らせない。 あんな赤毛。一舞とあの編入生くらいしか見たこと無いんだ。あの場所に2人で居ることは容易に理解できるが…。 涼 「先生」 翔 「!………どうした?」 涼 「予鈴、鳴ってますよ」 翔 「…ん…!」 声に振り向き我に返る。 涼の言う通り、5限の終わりを告げるチャイムが鳴り響いている。 (こんなデカい音にも気づかなかったのか俺…) 翔 「じゃあ…今日はここまでにしよう。残りは予習して来い」 そう言って授業を終わらせると、誤魔化すように教室を出る。 ガタガタとイスを引きずる音と共に、ザワザワとした声を背にして職員室へと向けた足をすぐさま止められた。 ?? 「ちょっと!」 翔 「!」 足早に廊下を進もうとする俺を、突然腕を掴んで引き留めたのは涼だ。 心配そうな顔をして、とっさに追いかけてきたらしいその表情は、俺と同じくあの光景を見たことを示している。 涼 「…あれ…イトコだからな?」 翔 「……だから?」 涼 「だ…だから?じゃなくてさ」 翔 「…心配すんな」 そうだ。心配なんか要らない。 置いてきぼりをくらう子犬のような顔で俺を見つめる涼の手を、そっと離して職員室に向かう。 一舞のことだ。またボケっとして不意を突かれたんだろう。 (あの無防備さはハンパねーからな) そうやって自分を納得させようとしてみても、思い出すとムカムカと腹が立ってくる。 それが一舞に向けられたものなのか、それともあの編入生に対しての苛立ちなのか。自分でも判断できなくなってくる…。 一舞の居る場所で、一舞に触れられない現実は…大人ぶっている自分が本当はガキなんだと思い知らせてくれる。 今の俺は、あんな場面を見ても、感情にまかせて飛んで行くこともできない。 (こんなことなら実習なんて受けるんじゃなかったな…) 正直な話。一舞に会いたくて仕方なかったんだ。 だから、此処に来られるようにジジイの権力だって使わせてもらった。 なのに…いきなりまた泣き顔を見せられたかと思えば、今度はこんな… 翔 「………」 (学校が終わればまた戻らなきゃならねーのに…) 今すぐ真相を確かめたい。大丈夫だという確信で安心したい。そう思う俺は、自分が思う以上にガキなんだろう。 一舞の性格や、今までの事を考えれば、こんな気持ちになることくらい容易に想像できた筈なのに。 (想像と現実は違うな…) どんなに欲しいと望んでも、誰にも触れさせたくないと願っても、鎖に繋いでおけるわけでもあるまいし。自分が情けない…。 結局は俺の方が夢中なんじゃねーか。 (くそっ!俺が一番面倒くせー!) Novel☆top← 書斎← Home← |