赤髪2




 その日の昼休み。

 綾…って子からメールが届いた。




――――――――――――
件名]お呼びだしメール*
――――――――――――
本文]
笹垣センパイこんにちは。
バンド部の綾ちゃんです
(・∀・)ノ
今日からよろしくッス

で。

↓一舞からの伝言↓
【昼休み屋上に来てね☆】

だってさ〜

笹垣センパイこれって
どゆこと〜?笑
――――――――――――



祐弥
「…」

 どんだけ性格砕け散っとんねん。俺は友達か。

(てか早速やけど情報漏れてんちゃん)


慎一
「大丈夫。管理は徹底してるから」


 とか言うてたやん…

 部長も微妙やん…


 しかも一舞から伝言て…

 つーか屋上て…

 どういうことやねん。

(意味無くビビるやん…いったい何の用やねん)



 とりあえず、呼び出しに応じて屋上に向かうことにする。






 情報漏れの件については《バンド部の綾ちゃん》やし…まぁええわ。


(それより俺…)


 まだこの学校に来て数日しか経ってへんねん。どこをどう進んだら屋上行けんねや…?


(見事に迷子やがな…)


 ほんで、ようやく目的地に到着した頃には、昼休み終わっとったってオチ。

 迷子とかめんどい。


(飯食うた後でほんま良かったわ…)






一舞
「…迷った?」

祐弥
「…あ」


 屋上に辿り着くと、フェンスにもたれて待っていた一舞が微笑んだ。

 妙な緊張を必死に隠して、余裕ぶった返事を返す。


祐弥
「…余裕で迷子なったわ」

一舞
「あは、ごめん…でも教室まで行くと目立っちゃうからさ」

祐弥
「うん…べつにええよ」


 昼の太陽の下で輝く赤い髪は、一舞によう似合っとって…なかなか可愛い。

 ほんで、そんなこと思てる俺なんやねん…って、内心セルフツッコミや。


一舞
「……お父さんの事、ありがとうね。教えてくれて」

祐弥
「……あぁ…いや」

一舞
「ママに言わせずに済んで良かった…」

祐弥
「……」

一舞
「だから…ありがとう」

祐弥
「………うん」


 ありがとうとか言われて、正直驚いた。

 呼び出し言うたら、タイマンか告白をイメージしてまうし、文句こそ言われても、礼を言われるなんか考えてなかってん。


 せやけど…そうやんな。

 華さんかて話すのは辛い事やもんな。平気なわけないわ…。

 それを気づける一舞はええ子やな…。


祐弥
「でも、ごめんな。…華さん、どうも無いか?」

一舞
「うん。そのうち一緒に、お祖母ちゃんに会いに行こうって言ってくれたよ」

祐弥
「…そうか……祖母ちゃん喜ぶわ」


 一舞の言葉を聞いて、なんや…ホッとした気持ちになった。

 何時になるかとか具体的な話やないけども、祖母ちゃんの望みは叶うんやな。




一舞
「てかさぁ…」

祐弥
「……ん?」

一舞
「祐弥くんはもっと、あたしに言いたいことあるよね?」

祐弥
「………へ?」

(……何が?)


一舞
「後から小出しにしないでさ、どうせなら最初にスッキリしておかない?」

祐弥
「……」


 …急に何を言い出すんか思たら、喧嘩でもしたいんか?


祐弥
「…どういう意味で言うてんねん」

一舞
「なんとなくだけど…ここまで来た理由が知りたいだけだよ」

祐弥
「………」

(なんとなく、て…)


 しっかし改めて《言え》言われてもどう言うたらええねん…


一舞
「…何でも言っていいよ。ちゃんと聞くし、ちゃんと応えるから」

祐弥
「……………俺な」

一舞
「うん」

祐弥
「…お前に会うてみたかってん」

一舞
「……」

祐弥
「一舞叔父さんの子供やし…名前も貰て、羨ましいなぁ思てたし…」

一舞
「……」

祐弥
「……てか、それだけやで…コッチ来た理由なんか」

一舞
「………ホントに?」

祐弥
「…ほんま」


 赤い髪をキラキラさせて、俺を真っ直ぐ見とる一舞は、写真で見た叔父さんによう似とる…。


(この前は似てない言うたけど、ほんまは似とるで…)


祐弥
「幸せやな、お前……みんなに愛されて…大事にされてるんやもんな」

一舞
「………」

祐弥
「俺はよう馬鹿にされたで。頭の色もそうやけど、親のことでもな…」

一舞
「………」

祐弥
「おとんは借金まみれのしょ〜もない奴やし、おかんは俺の事なんか放って若い男と遊びよるし。それが噂なってんか知らんけど、友達や思てた奴も次々離れてしもて、向こう居っても俺の味方は祖母ちゃんだけや…」

一舞
「………」

祐弥
「せやから、小さい時から祖母ちゃんが会いたい会いたい言うてたお前に、会うてみたかってん。父親居らんと…きっと寂しい思いしてたんやろなぁ思て…」

一舞
「………」

祐弥
「それが会うてみてびっくりやで………やたらに気ぃ強いし、周りには常に男と友達が居って、あげくバンドとかライブとか好きなことも出来とるし。みんなに大事にされとって、優しい恋人も居って、新しい父親も居って、母親からの愛情もたっぷりやし…」

一舞
「…………」

祐弥
「あげく………叔父さんのレスポールまで貰ったんやもんな………ズルいわ」

一舞
「……やっぱりアレ、お父さんのギターだったんだね。使えない人から貰った物としてはかなり使い込んであるし、不思議だったんだ」

祐弥
「…なんでこんなに違うねん。同じ血ぃやのに………なんでお前ばっかりええ思いしてんねん」


(…てか俺の口。何を口走っとんねん)




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