波紋8




―――――――side 涼

 《Babies'-breath》の御披露目ライブから一夜明け、学校に向かうため家を出た。そしていつもの通り、藍原邸の前を通って行こうと角を曲がる。



「………あ」


 そこへちょうど一舞が家から出るところらしく、朝日に照らされた赤髪が目に止まった。



「一舞」

一舞
「あ、涼ちゃんおはよー」


 笑顔で応える一舞に走り寄ろうとした時、一舞の後ろからもう1人の赤髪…?


祐弥
「あ…どうも」


「…お…おう」

一舞
「あぁ、祐弥くんね。ママが勝手に連れて来たくせに、送るの面倒だから泊まっていけって言われたらしいよ」


「…へぇ…さすが華さん」

祐弥
「はは…俺は帰る言うたんすけど、なんせ道がまだ解らへんかって」


「だったら俺に言えよな…ウチなら男ばっかだし遠慮も要らねーのにさぁ」

一舞
「あ、そうだよね?そうだった。あはは!」


「………?」
(ん?なんだ?今の違和感…)


「(なぁ笹垣…)」

祐弥
「(…はい?)」


「(なんか一舞…変じゃね?)」

祐弥
「(…わかります?)」


「(なんかあったのか?)」

祐弥
「(う…えー、と…)」


「?」

香澄
「あ!笹垣って人だ!」


「!!」

祐弥
「!!」


「うわっマジだ!なんで此処に居んのお前?」


 なんだか雰囲気のおかしい一舞のことを笹垣から聞き出そうとしているところに、香澄と照が現れて話が途切れた。


(やべ、香澄と照の存在忘れてた。…ややこしいことになる前になんとかしないと)



「あ〜…弥生さんから聞いたんだけど、笹垣は一舞の親戚らしくてさ。華さんの都合でこういう状態になったらしいぞ」

祐弥
「……」


「…ふうん…あ〜そうか、華さんの…そりゃ災難だったなぁ笹垣」

香澄
「なんだ親戚なの…それならちゃんと言ってくれればいいのに」


「まぁ弥生さんによれば、一舞は知らなかったらしいから無理ねーって。なぁ?」

祐弥
「あはは……(…すんません)」


 口パクで俺に詫びを入れる笹垣。



「(…後でちゃんと説明しろよな)」

祐弥
「(うっす)」


「……」
(…それにしても)


 一舞は既に、スタスタと先に歩き始めている。

 いつもの一舞じゃない……そう思うのは、たぶん見間違いじゃない。合宿の時にあれだけ見せつけられたんだ。きっと翔くんだって無関係じゃないだろうな。


(…さて、どうしよう。つーか俺がフォローしちゃっていいのかな…?)


 腰まである長い赤髪を揺らして歩く後姿を見つめながら、とてつもなく心配している自分を自覚する。


(翔くん…なんでこんな時に先生とかやってんだよ…)



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