原因8





 しばらく考えてみた。

 あたしが涼ちゃんに嫌われてしまった理由を…。







 考えたけど。わからない。

 あたしはただ必死だった。こうして戻ってくるために、親を説得する術を探してた。

 子供であることは仕方のないことだし、とにかく方法を探さなきゃって…。

 ただの我が儘じゃなく、堂々と胸を張って涼ちゃんに会いたかったから。


(いったい何がダメだったの?別れる前から嫌われてたとか?)



「……」

一舞
「…照ちゃん」


「どうだ?」

一舞
「…わかんないよ。あたしの中には理由が見つからない」


「…そうか」


 あたしの言葉に、照ちゃんは安堵の表情を浮かべた。



「お前の気持ちはわかった。けど、もう一個な?」

一舞
「うん」


「お前と涼が別れる時、お前が最後に言った言葉…覚えてるか?」

一舞
「…え……次は…頑張ろう?」


「そう!それだ!」


 あたしを指差して、照ちゃんが声を張り上げる。


香澄
「照、うっさい」


 リビングに入ってきた香澄が、照ちゃんをひと睨みして、静かにあたしに言った。


香澄
「…あのね一舞。…涼ちゃんは、その一舞の言葉の意味を取り違えてるみたいなの」

一舞
「…取り違え…って?」


 いったい何と取り違えてるっていうのか…意味がわからない。




「…涼の神経質な性格、知ってるか?」

一舞
「……え、知らない」


「相手の言葉の裏を悪く読みたがるんだよ」



(…言葉の裏?…って何?)



香澄
「涼ちゃんはね…一舞は涼ちゃんと別れて、別の恋愛をするって言ったと思ってるの。そんで、彼にもそうしろって言ったと思ってるみたい…」

一舞
「…え?」



(何それ!?それじゃ全然、真逆の意味になっちゃうじゃん!)



香澄
「えっ!?わっ!一舞!?」

美樹
「きゃあっ!シッカリしてぇ!!」



 2人の慌てた声が、水中にいるようなくぐもった音に聞こえる。視界はぐるぐるしてるし、めまいでも起こしてるんだろうか…。


(美樹ちゃん、香澄、ごめん。頭の中を整理するから少し待って…)




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