波紋7




―――――――side 祐弥

一舞
「………わかった。祐弥くん、ありがとう」


 そう言うと一舞は、フラフラと立ち上がってリビングを出て行った。


 ほんまに何も知らんと今まで居ったんや……てか俺が話して良かったんやろか?

 一舞のあの様子を見てまうと、そんな後悔が押し寄せる。


祐弥
「…」


 何気なく華さんを見やると、表情ひとつ変えずソファーにどっかり座ったまま…。


祐弥
「…フォローとかないんすか?」


 つい口から零れた不満。それは俺の表情にも出てるんやろとわかる。

 せやけど目の前の華さんは、何を言うてるんやという呆れ顔…。



「…こうなる事くらいわかってただろ」

祐弥
「…でも母親やんか。もう…悲しみも無いんすか」


「…泣く時間はもう終わったってだけだ」

祐弥
「………」


「…一舞の部屋は二階だぞ」

祐弥
「……」
(俺がフォローしろて事か…)


「それから、一舞の部屋の隣が客間になってるから…寝て行け」

祐弥
「え……いや…帰りますよ。一舞に悪いやん」


「いいからガキは大人の言う事を聞いておけ」

祐弥
「ガキちゃうから帰る言うてんやんか」


「…道わかんねーだろ」

祐弥
「あ」


「今夜は龍二も帰って来ねーし、あたしも送ってやる元気は無いからな。黙って寝て行け」

祐弥
「……」
(くそっ、カッコつかへんし…)






 仕方なく俺は、言われた通りに階段を登る。

 二階のフロアに着くと、一番手前のドアが少し開いていて、光が漏れとることに気づいた。


      コンコン…


(…寝たんかな)


      コンコン…


祐弥
「……大丈夫なん?」


 ノックをしたままの体制で扉に耳を近づけるけど…返事は無い。


祐弥
「…開けんで」


 そう言ってドアを少し引くと、一舞がベッドにもたれてぼんやり天井を見ていた。


祐弥
「………大丈夫か?」

一舞
「………あぁ、祐弥くん……まだ居たの?」

祐弥
「うん…まだ居る。っちゅーか泊まれ言われてん」

一舞
「……ふうん…てか入ったら?」

祐弥
「入れるわけないやろ……彼氏に怒られるで」

一舞
「……なんで?」

祐弥
「俺がその立場やったら、なんぼイトコや言うても嫌や」

一舞
「…そういうものなんだ……?てか…寝る時は隣の部屋使ってね」

祐弥
「わかった……おやすみ」

一舞
「…おやすみ」


 あの表情が、どんな感情を表してんのか俺にはまったく解らへんけど…今はそっとしといたったほうがええんかもしらん…。

 俺は静かにドアを閉めた。

 そしてその隣の部屋で、眠りについた。





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