波紋4




透瑠
「そういえば。一舞ちゃんのパパってどこに居るんだろうねぇ」


 唐突に兄貴が言った。


弥生
「………」


「…」
(…てか一舞のパパは)



「アキラさんの兄ちゃんだろ?」
(つーか一緒に暮らしてるし)

透瑠
「龍二くんは最近パパになったんじゃん。俺が言ってんのは、血の繋がった父親のこと」


「…あ?……あぁ…そっか」

透瑠
「子供は1人じゃデキないだろう?」


「…わかってるってそんなこと」
(確かに…一舞がすごく自然に龍二さんをパパって呼ぶから忘れてた…)

透瑠
「……それに華さん、初婚だって知ってた?」


「え!……バツイチじゃねーの?」

透瑠
「うん、違う」


「…」
(…子持ちで初婚?)


 …いや。今の時代珍しくは無いかもしんねーけど、華さんが一舞を産んだ頃ってどうだったのかな…?

 っていうか、どういう事情でずっと一舞と2人きりだったんだろう?

 華さんくらい若くて美人なら、いくらでも相手は居たと思うんだけど…。


透瑠
「そもそも龍二くんと出会ったのだって、弥生さんが強く勧めたから結婚まで話が進んだんであって…そうじゃなかったら華さんはずっと一舞ちゃんと2人だけでいるつもりだったんだよねぇ?」


「!」
(マジか!)

弥生
「……まぁ、そうなんだが。………詮索はもうその辺にしてくれないか」


「…あ…すんません」

透瑠
「ごめん弥生さん。可愛い女の子の事となるとつい」

弥生
「まぁ…一舞が知るべき事だが…。現状、何も知らないんだ…そっとしておいてくれ」


「…………」


 一舞が知るべき事。弥生さんはひどく困った顔をしてそう言ったけど…。

 どうして自分の親の事なのに、一舞には知らされていないんだろう…?


 俺自身、一舞とはそういう話はしたことが無いし、龍二パパさんが馴染みすぎてて気にもしてなかった。


 笹垣…いったい何のために一舞の前に現れたんだ?

 一舞はアイツを知らなくても、アイツは一舞を知ってるのかもしれないし。


「………」
(何か…企んでるのか?)


 嫌な奴には思えなかったんだけどな…

 こうなってくると疑わしくなるなぁ…。



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