始動11




―――――――――――side 蓮


(笹垣とかいう奴…まさか入部する気じゃないよな…?)


 本当になんとなくだが、良くない予感がする…。

 由紀の隣に立ち、改めて俺らの機材の扱い方を説明しながら不安感に苛まれている…。

 俺の予感は当たるんだ。良くない事は特に…。


由紀
「…先輩?」


「むっ!?」

一舞
「む?って」


 俺の目の前で急に由紀の手がヒラヒラと動くもんだから、妙なリアクションをしてしまった。おかげで一舞がくっくと肩を揺らしている。


由紀
「…心配ですか?」


「……いや…由紀の仕事に問題はない」

由紀
「…じゃあ、どうしたんですか?」


 心配そうに眉をハの字にしている由紀を見て、しまったという思いと同時に、いつも通り一生懸命な姿勢につい笑みを湛えてしまう自分が不思議だ。



「…あの…笹垣って奴が気になってるだけだ」

一舞
「…まぁ…まだよく知らない人だしねぇ」

由紀
「…なんだかあの人…怖いですよね」


「…?」
(…怖い?………まぁ、ある意味怖いかもしれないな)


 そう思うのは得体が知れないからなのか、確かに目的が分らない。

 その上あの態度だ。何に対してあんなに攻撃的になっているのか、あの目…特に一舞に対する目つき…知り合いでも無いのになんなんだ…?


      コンコンッ…


一舞
「はぁ〜いど〜ぞ〜」


       ガチャ…


慎一
「調子どうですか?」


「問題ない」

慎一
「了解です。んで、ユッキーにお願いあるんだけど」

由紀
「はい。なんですか?」

慎一
「笹垣くんなんだけど…機材の担当に入れてもいいかな?」

由紀
「え」

一舞
「……慎ちゃん。他は空いてないの?」

慎一
「他は…現状いっぱいいっぱい…補欠もいらない状態だよ。てか楽器触るのが好きらしいんだよね…彼」

一舞
「………そうなんだ…」


 一舞は自分のギターの音を確かめながら少し表情を曇らせている。

 一舞が嫌がるなんて珍しいことだ。きっと、感覚的に何か感じてるんだろうな…。



「…アイツ、入部するのか?今日は見学のはずだろ」

慎一
「なんか急にやる気になったみたいっすね…まぁ今日のところは何もさせられませんけど」


「そうか……とりあえず返事は保留にしといてくれ。由紀、いいよな?」

由紀
「…はい」

慎一
「わかりました。んじゃそろそろリハやるんで、よろしくっす」


「………」
(…参ったな)




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