原因7






「俺からは何を教えればいいんだ?」


 照ちゃんがあたしに向かって笑顔で尋ねた。

 あたしは、とにかく謝るべきだと思ってとっさに頭を下げた。


一舞
「照ちゃんごめん。その前に謝りたい。」


「ん?俺に?」

一舞
「うん…あたし、照ちゃんに言われてたのにあの部屋まで行ったんだ」


「…あぁ。あの事か」

一舞
「せっかく気遣ってくれたのにごめんなさい」


「いや、それはべつにいいんだけどよ。お前は大丈夫なのか?」

一舞
「え?」


「ちゃんと説明してやらなかった俺が悪い。だから謝るのは無しだ…けど、あの部屋に行ったお前は平気なのか?何か見たんだろ?」

一舞
「何か…って」


「女が居たとか」

一舞
「…うん、居た。その人がちょうど部屋を出るところに出くわしたから」


「…なるほどな」

美樹
「…大丈夫?」

一舞
「大丈夫だよ。だって彼女くらい居てもおかしくないもん」


「彼女なら…いいんだけどなぁ…」

一舞
「?」

美樹
「……」


 照ちゃんと美樹ちゃんは、視線を合わせて互いに困った顔をする。

 あれが彼女じゃないとしたら何なんだろうか?…でも、考えてみればおかしい。

 彼女が居るのに、あたしにあんな事するのはおかしい。


一舞
「………」

美樹
「何かあったの?」

一舞
「えっ!?」


「何かあるなら言っておけよ?お前が戻ってからの涼は一段と機嫌が悪くて扱いにくいからな。お前に会ったんなら、何かしててもおかしくない」


 冷静な口調で怖いことを言う。…でも、照ちゃんの言っている事はわかる。

 あの時、伝わってきたから。

 涼ちゃんがあたしを憎んでること…。


一舞
「何も無いよ。ただ、あんまり睨むからさ…なんでかなぁ…って思って」


「…涼のあの態度な」

一舞
「うん…昔がすごく優しかっただけに、なんかショック大きくてさ」


「じゃあ聞くけどな?」

一舞
「え?うん…」


「お前には何も、嫌われる原因は無いか?」

一舞
「…え?」

美樹
「ちょっと照!?」


「美樹は知らねー話だ。ちょっと黙っててくれるか」

美樹
「…わかった」



 今あたしを見つめる照ちゃんの視線は、いつになく厳しく、あたしの真意を確かめようとする真剣な眼差し。

 あたしもそれに応えるように、自分の中に理由を探した。





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