始動9





「それにしてもお前…それ地毛?」





祐弥
「え……まぁはい」


 カウンター席に座って、開店準備をする広夢を眺めていたら、涼さんからの唐突な質問が飛んできた。


広夢
「お前の髪と涼さんの彼女の髪色が被ってんの」


 すると、布巾片手に広夢が被せてきよる…。

(脳天気やな広夢…さっき怒られたばかりやのに。ほんまちゃんと仕事しろや)



「テメーは要らねーこと言うな。てか彼女じゃなくて《元》彼女な」

広夢
「あ、そっか」

祐弥
「……」

(つーか…ってことは…。この涼さんが一舞の元カレっちゅーことやんな)

(んで今はあのデカい男か………アレは好かん。てかなんや…尻軽やん)


慎一
「ちゃ〜っす」


 はぁ〜…っとため息がひとつ零れたあたりで、なんや…えらい眠そうなんが入ってきた。



「おぉ…部長〜お疲れさん」

祐弥
「!」

(え!部長!?)


慎一
「なんですかソレ。変にプレッシャーっすよ」


「まぁ気にすんな。あ、コイツ見学だってさ」

慎一
「ん…あぁ…めぐが言ってた奴ね。どうも、部長になっちゃった森です」

祐弥
「どうも……てか名前知ってんねやろ?」

慎一
「うん、知ってるよ〜…てかいいなぁ関西弁…」

めぐ
「お疲れでっす〜」

慎一
「あ、めぐのイチ押し来てるよ〜」

めぐ
「は?何言ってんの?あ、祐弥くん。いらっさい」

祐弥
「ども」


 めぐちゃんが来たあたりでちょっと安心したけど、部員らしき奴らがどんどん増えていくもんやから、なんとなく居づらい気持ちになる。


一舞
「ちわっす〜」


「おっせー」

一舞
「は?いきなり何?つか、こっちも色々あるんです〜……あ」


「コイツ見学。広夢の連れだってさ」

一舞
「…ふぅん……今朝はどうも」

祐弥
「……どうも」


「ん?…何?知り合い?」


「まぁ…今朝ちょっとな」

一舞
「わ!ビビったー!急に後ろに立たないでよもー!」


「いいだろ別に」

祐弥
「……」

(出たなバカップル…)



「てか洋は?」


「何故俺に聞く」


「双子ならわかるんじゃねーかと」

一舞
「根拠無いじゃん」

祐弥
「……」

(俺、完全アウェイやな…。つーかよく元カレ今カレで仲良うできるもんやわ…)


 楽しげに2人の男と会話をする一舞の横顔を見ながら、なんや訳のわからん感情が、沸々と湧いていくのを…感じていた。



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