始動3




――――side 笹垣 祐弥

関西の高校から編入してきて初日。いきなり会うてしもた。

(てかなんやねんあの女…背ぇがデカい上に態度もデカいやん…)

 こっちが凄んでも平気な顔して言い返して来よる。気ぃ強いんは誰譲りなんやろな?

 ほんでアイツを庇うみたいに前に出てきよったんが、付き合うてる奴なんかな…?

(まぁ男の1人くらい居るやろな………ってなんで俺が暗なってんねん!わけわからん!)

 つかやっぱり写真と実物やったらインパクト桁違いやな…女版やとあぁなんねや…。

(デカいけど…可愛いかったな……)


 なんて。そんな事をグダグダ考えながら、とりあえず2年の教室には着いたけども…こっからどうすんねん俺。


??
「…もしかして編入生?」


 教室の前で佇んでいた俺の背後から、驚く程のハイトーンな声が響いた。


??
「おっす!おら広夢!お前は確か…笹垣 祐弥だったよな?」

祐弥
「…は?悟○かて。てかなんなん?誰?」

広夢
「あはは!いいねその返し!俺は富田広夢、生徒会の副会長だ。てかウチの学校では編入生とかの世話係は生徒会の役割なんで、色々と任してほしいなと」

祐弥
「…あぁ…そうなんや……ほんなら頼むわ」


 いきなり現れてやけにキラキラ笑顔を振りまく奴やな…なんとなく苦手やけど嫌な奴では無さそうや…そう思って着いて行く。

 教室に入って、他の生徒が揃っているのを確認すると広夢は、教壇に立ち俺を紹介した。これはこっ恥ずかしいでほんま。

 その後…俺を席に案内すると広夢はいそいそと教室を出て行った。


めぐ
「その髪色ってもとから?」





祐弥
「……」

(また後ろからか…)


 俺の後ろの席の、ピンクの頭をした女が話し掛けてくる。


めぐ
「あ、気にしてたらごめん」


 振り向いた途端に謝られるとかどんだけやねん俺。


祐弥
「…なんも言うてへんやん。何謝っとんねん」

めぐ
「だって睨むんだもん」

祐弥
「もとからこんな顔やっちゅーねん…で、何子さん?」

めぐ
「あは…あたしは栗原めぐみ。一応あたしも生徒会関係だから何かあれば言ってねってことで」

祐弥
「……あぁ…ありがとう」

(…生徒会ねぇ)

(なんや変わった学校や言うのは知っとるけど、見回すと思てたより派手な奴が多いんやな。生徒会関係やのに頭ピンクとか…そら俺の頭に驚かんのもわかるわ…)


 ピンクの髪の女…めぐちゃんは、遠慮しながらも色々と教えてくれんねんけど……その目線はずぅ〜っと、俺の髪の毛にロックオンされたままやねん。

(そない気になるか…)

祐弥
「…つーかコレ…地毛やからな」

めぐ
「そうなんだ!?じゃあ一舞と同じだ!あ、あは、後輩にね?同じ色の髪した子が居てさ」

祐弥
「…一舞?」

めぐ
「え、うん…もしかして知ってる?」

祐弥
「…あぁ…一応…親戚やから」

めぐ
「そうなんだ?じゃあその色は血筋なんだねぇ…いいなぁ真似したいなぁと思うんだけどなかなかその色にならないんだよねぇ〜」

祐弥
「……まぁ…気に入っとるよ…てか一舞と知り合いなん?」

めぐ
「うん。部活が一緒」

祐弥
「…何部?」

めぐ
「バンド部」

祐弥
「バ……」

(…なんやその安易な名前!もっと無かったんかいな!)

祐弥
「……軽音部でええんちゃうん?」

めぐ
「あ、全然違うよ」

祐弥
「せやかてバンド部〜言うくらいやからバンド組んで楽しく演奏すんねやろ?」

めぐ
「ん〜なんて言うか…もっと規模が大きいの」

祐弥
「…規模?」

めぐ
「うん…あ〜…説明が難しいなぁ。なんなら今日も部活あるから見学してみたら?」

祐弥
「………あぁ…そうやな…」

めぐ
「じゃあ広夢に言っとくね。アレでも一応は副部長だから」

祐弥
「………」

(バンド部…ねぇ…一舞がバンド部……)


 やっぱ血は争えへんな。

 親戚言うても一舞は俺の事なんか知らん。生まれてから今日まで一度も会うたことが無かってんから…。

 あの驚き方やったら珍しいのは自分だけや思てたんやろな…きっと自分の父親の事も知らんのやろし。

 だいたい親戚一同集まる時も、アイツのおかんが来てただけやったもんな……それ考えたらちょっとだけ腹立つわ…。

 何も知らんと脳天気に生きて来よったんやろ思て腹立つ…男とヘラヘラしとんのも腹立つ…つか何も教えへんまんま育てよったアイツのおかんにも腹立ってくるわ。


めぐ
「祐弥くん」

祐弥
「……何」

めぐ
「また怖い顔になってるよ」

祐弥
「…もとからやて」





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