再会1



 穏やかな朝日に照らされた通学路。いつもの感じならとっくに学校に着いている時間だけど、今日は少し事情が違う。

 とにかく、あたしは落ち込んでいる。

 当然、笑顔で再会できると思っていたのに、挨拶すら交わせずに背中を向けられてしまったのだから。

 嫌われるような事をした覚えはないけど、もし気づかずに何かしてしまったのならば、すぐさま謝りたい。とにかく仲直りしたい。そうじゃなきゃ戻ってきた意味が無くなってしまう気がする。

 頭の中でぐるぐると、解決の見込めない疑問が走り回り、なんとか学校へと進める足は、ふわふわとして地に着かない。
 
 隣を歩きながらあたしの顔を覗き込むように見ていた香澄が「あ」と小さく呟いた。

 その瞬間、地に着いていなかったはずの足が小さな段差を捉え、全身が浮きあがった。


一舞
「いったー!!」


 おもいきり地面に尻餅をつき、本来なら20センチは下にあるはずの香澄の目線があたしを見下ろした。

香澄
「だいじょうぶ?」

 少し屈んで手をさしのべてくれる彼女、その手を借りて立ち上がる。

一舞
「ありがとう」

 それ以上は特に何を聞かれるでも無く。ただ再び並んで歩く。香澄らしい気遣いだ。


由紀
「お...おはようございます」

 しばらく歩いて門の前に到着。由紀ちゃんと合流。

香澄
「おはようユッキー」

一舞
「由紀ちゃん、おはよう」

 正門前に停車していた一台の高級車。その車内から、ゆっくりと降り立った由紀ちゃん。傍らには執事さんが控え、あたしたちを待っていたのだ。

由紀
「だ、大丈夫ですか?」

 心配そうに瞳を揺らしながら、あたしの顔を覗き込む。

一舞
「うん、大丈夫...」

 なんとか返事をして、ぼんやりとまた...3人並んで校舎に向かった。











 昇降口の扉をくぐり、靴を履き替えるため、それぞれの靴箱の前に移動する。

 中学の頃から早めの登校が習慣になっていたから、校内のざわめきが新鮮だ。
 なんだか慣れない空気に戸惑いながら、靴箱の扉に手をかけた。


 その時。




一舞
「うわっ!?」          ガシャン!!




 ...うっかり驚いて、開けたそばから扉を閉めてしまった。


香澄
「えっ?何?どうしたの?」

由紀
「どどっどうしたんですか!?」


 すぐ傍に居た2人が、あたしの驚きに感化されたように目を丸くする。

 香澄なんかは、元々大きな目を更に見開いているものだから、緑色のビー玉みたいな瞳が今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。





 それにしても迂闊だった...。

 すっかり忘れてたよ、こういうイベントがあることを...。





prev * next

Novel☆top←
書斎←
Home←


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -