慈愛2




 美樹のマンションから真っ直ぐ家に帰ると、門の前で向かい合わせの方向から帰ってきた蓮とはち合わせた。



「…む」


「…出かけてたんだ?」


「…あぁ、由紀から連絡があったからな。今夜のライブの打ち合わせだ」


「…ふぅん」


 俺の問いに素っ気なく答え、先に家に入って行く蓮を見送る。



「……」

(由紀ちゃんねぇ…)


 ずいぶん彼女がお気に入りみたいで…というか、今までのタイプとはずいぶん違うけど、そういう視点で見てるのかは定かじゃないし、どうなんだろう?

 なんて、どうでもいいことを考えながら蓮に続いて家に入り、真っ直ぐに自分の部屋へ向かう。

 これから俺は、美樹との事で答えを出さなきゃならない。

 もし美樹が俺を好きじゃなかったら、あのまま離れてたはずの問題なんだけどな…。



       カタ…


(!)


 物音に振り返ると、部屋の入り口に蓮が立っていた。



「…挨拶も無しに入ってくんなよ」


「…もう慣れたものだろう?」


「…まぁね」


 勝手に俺の部屋に入ってくる蓮に、もう怒る気もしない…。

 勝手にしてくれという態度で俺がため息をつくと、蓮は部屋の入り口の柱にもたれかかった。



「…今朝はバカみたいに元気が良かったのに、またカビでも生えそうな顔をしているな」


「………」


「…美樹と話せたのか?」


「………話した」


「…それで?」


「ハァ………美樹は、俺を好きらしい」


「…なんだ、良かったな。毎日へばり付いてた甲斐があったじゃないか」


「……そんな簡単だと思う?」


「簡単かどうかはお前が決めることだ。どうせまた、余計な気をまわしてるんだろうが…」


「何が余計なんだよ。いくら好きだからって、それだけで傷を抉るみたいなこと出来ねーだろ?」


「…何のために、俺がお前なんかに黙って殴られてやったと思っている」


「あんな一発くらいで美樹の痛みが消えるかバーカ!」


「…そうだとしても、お前の気持ちだけで決めていいわけが無い」


「………」


「美樹は何て言った?お前が大切に想うアイツの気持ちは無視してもいいのか?」


「………」


「…俺は……美樹に幸せになってもらいたい」


「!」


「…お前にも」


「………………き…」


「気持ち悪いことを言わせるな!」






「はっ!?つかソレ俺の台詞!!」


「バカが無い頭で考えるな。お前まで、美樹を泣かせることは無いだろ」


「………バカは余計だ」


 蓮がここまで言うなんて…こんなに気持ち悪い蓮は久しぶりだ。

 おかげでちょっと、楽になった気がする…。



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