序曲3 涼 「つーかコレ、何の鍵だ?」 洋 「はぁ?」 思ってもみない質問をしてくるから驚いた。というか、あまりにも分かって無さ過ぎるだろコイツ。 洋 「…ソレ。美樹の部屋の鍵だよ」 涼 「は!?」 洋 「何だよ何も聞いてないんかよ」 涼 「だってアイツ何も言わねーんだもん」 洋 「何も言わねーでソレ渡されたの?」 涼 「つーか……すげー泣くから、何も聞けなかったし」 洋 「……?」 (泣いてた?…泣いてたんだ) 洋 「…ピアノに感動してたんじゃね?」 涼 「…お前、見たな?」 洋 「…見た」 涼 「………」 洋 「…いいよね〜ピアノ弾ける男子ってさ」 涼 「あ、あれは詫びだ。それ以上の意味はねーし」 洋 「…詫び?」 涼 「一舞と別れるちょい前に美樹に八つ当たりしちゃってさ…謝って…そんで、殴れって言ったら、ピアノ弾けって言われたから…」 洋 「何だソレ…」 涼 「だから、別にそういう意味なんて無いんだよ」 洋 「……へぇ…」 (詫び入れなきゃなんねー事したんだ…) 涼 「で…気づいたら泣いてて。無言で渡された」 洋 「…ほぉ〜」 涼 「わけわかんねーよ」 洋 「……」 (ほら…ただ泣いてるだけじゃ涼には伝わらねーじゃんか) 洋 「…あのさぁ涼」 涼 「…何」 洋 「俺……蓮と美樹の事聞いちゃったんだよね」 涼 「……………」 洋 「……」 (…黙ったってことは、知ってたってことだよな) 洋 「だから、美樹のこと諦めるって。言ったんだ…本人に」 涼 「………?」 洋 「その鍵。いつだったか忘れたけど、俺が勝手に作ったやつ」 涼 「………お前のか」 そう呟いて涼は、美樹の部屋の鍵を自分の目の前にかざす。 涼 「蓮が話したのか?……あの事」 洋 「まぁ…責任感じてるらしいよ、アイツなりに」 涼 「…へぇ」 洋 「……」 涼 「…じゃあその手は、蓮を殴った証拠だな」 洋 「普通に殴るでしょ」 涼 「だよな…」 (ホントに全部知ってるんだなコイツ…) 俺のぶっちゃけ話に明らかな動揺を見せて、涼は黙ってしまった。 そんな涼と並んで歩く店までの道。次の角を曲がれば店の前だ。 涼 「…じゃあ俺の方も殴っとけよ」 洋 「…は?何言ってんの?」 涼 「俺のは未遂だったけど、やっちまった事は蓮と変わらない…」 洋 「…………」 涼 「お前の気が済むまで殴ってくれて構わねーからさ…」 洋 「…」 (ふぅん…) Novel☆top← 書斎← Home← |