恋敵2




 昼の太陽が眩しく差し込む午後の別荘。

 各自、荷物の運び出しを終えたところで、翔さんは車を移動するため出て行った。



 俺ら高校生チームは《くじ引き》で乗り合わせを決めるため、リビングの中央に集まった。

 …しかし、ソファーから動かない男が1人。

 涼だ。

 デカいソファーにどっかりと座った状態で、携帯電話をピコピコやっている。



「涼、乗り合わせ決めるぞ」


「……」



 蓮の声はちゃんと聞こえているらしく、左手を挙げて応える。



「……」

(…メールか)

(相手は美樹かな………まぁいいや、俺も後でメールしとこ)



 涼が輪に加わったのを見計らって、紙の束を握って、輪の中央にかざす。


一舞
「…引くやつ決まったよね?これでいいよね?」


 一舞の声にみんな頷いた。

 俺の手の中に握られた細長い紙切れの束。はみ出して垂れ下がる紙の端を一斉に摘む。



「じゃあ、せーので引くよ?」


「いいぞ」


「せーの!」



……………

………





 それぞれ引き当てた自分の紙切れをマジマジと見つめて、しばしの沈黙…。

 先に口を開いたのは蓮だ。



「俺は学さんの車…洋は?」


「ん?……俺は翔さん」


「ほう…一舞はどうだ?」

一舞
「アキラくんの車〜」


「…ふっ」

(つか、ホントに真面目にくじ引くあたりが一舞の可愛いところだな。コッソリ彼氏の車に乗りゃいいのに)



「照は?」


「純さんの車」

一舞
「関西弁講座だ」


「よし、完璧に覚えてやる!」

一舞
「うははっまじ?」


「ふはっ」

(まぁ〜たバカ言ってるし)


 でも、純さんの車は本当に楽しそうだ。



「…涼は?」


「ん…俺も、翔くん」


「!!」



 出たな!?元彼vs今彼の、新旧カレシ対決!!

 …なんて、危うく驚きが声になりそうになった。




「(…声に出さずに、よく我慢したな)」


「(ばっ!声になんか出せるかよ!)」


「(しっかりムービーに収めておけよ)」


「(お前がそんなこと言うなって…)」

(つか黒笑い。出てる出てる!)



「(ムービーとかマジ無理だから)」


「なんだ…つまんねー奴だな」


「…はぁ」

(これが俺と双子とか…マジで信じらんねーわ…)












 ちなみに乗せてもらえる車は4台。

 その車1台につき用意したクジは二枚ずつ。


 俺の手に残された紙切れは、巧いこと翔さんの名前が入ったものだけが全て引かれ、これから起こるかもしれないバイオレンスな出来事を予感させる。

 バイオレンスっつっても、翔さんが…って言うより、涼の出方次第なんだろうけどな…。

 とにかく俺は、何も起きないことを祈りつつ…

 車へと荷物を運びこんだ。





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