恋病7




「だから…仲直りしよう」


 触れ合う程に近づいた鼻先と唇にかかる息、今にも触れ合いそうな距離にドキドキししながら了解の返事をする。


一舞
「…う、ん」


 だけど、あたしが言い終わらないうちにその声を止められて、痛いくらいに胸が高鳴った。


 それは、ほんの少し触れただけのものだったけど、こんなにドキドキするキスをあたしは知らない。



「……」

一舞
「……」


 まだ離れないおでこが、その先を期待させるから…恥ずかしいのになんだかもどかしい。



「…ごめん」

一舞
「…?」


 翔の声に一瞬戸惑ったあたしは、再び触れた感触に、体中が感電してしまったかのような痺れを感じた。









 優しく、ひんやりとした感触が…誘うように強く柔らかく、何度も唇に触れる。


 徐々に互いの温度が均一になって、嬉しくて、幸せで、あたしの髪を撫でてくれる翔の大きな手が愛しくて…

 あたしはそのうち、体の芯までびりびりと痺れて、頭が働かなくなってしまった…。



























 ふんわりと、夜の空気が唇を撫でて。

 キスが止んでしまったことに気づいた。


 あたしは飛びそうだった意識を取り戻し、目を開ける。





「…この前のお返し」



 そう言って、視界の中にぼんやり映る翔は笑顔を浮かべている。


一舞
「………この…前?」


「この前…お前からしてくれただろ?」

一舞
「………?」



「…忘れた?」

一舞
「…あ」


 あたしの頭に蘇った記憶。全身が一気に熱を持つ。



(…そうだ、あたし…自分から翔にキスしたんだ!)




「なんだ…忘れてたのか」

一舞
「いや…忘れてたってか、それ以後のことで頭がいっぱいだった…というか」


「ふぅん…まぁ俺は覚えてるからいいけど」



 イタズラっぽく微笑みながら、翔は納得している。



一舞
「……」


 いつもの彼の、その笑顔を見て、途端に安心できてしまうから不思議だ。



「ん?」

一舞
「…ううん」


 翔はまだ、あたしの手を握ったまま。

 あたしが翔に視線を向けると、上目づかいに見つめ返されるから若干照れる。


 そんな甘えた表情を崩さない彼に捕まったまま、身の置き所がなくなってきた頃。




「…他の奴らが起きてきたら面倒だから…そろそろ戻るわ」



 翔がそっと立ち上がった…。



一舞
「………うん」



 あたしはそんな翔を見上げて小さく頷いたけど、手を離されて、すぐさま寂しくなった。

 本当はまだ居てほしい。そう思ってしまう。

 翔の背中を見つめるその視線に気づいてくれたのか、翔は、頭を掻くような仕草で2・3歩進んだかと思うとクルリとこちらに向いて、戻ってくる。



一舞
「…ん?」


「…うん」


 それだけ呟いて、あたしは再び唇を塞がれた。






(これで、仲直り?ってことでいいのかな…?)



 なんて、考えていられたのはほんの一瞬。 

 ごく自然に翔を受け入れた自分に少し驚きながら…

 あたしの髪を撫でる翔の指にドキドキしながら…

 とても幸せな気持ちが溢れていくのを感じていた…。




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