進化4



 涼ちゃんがあたしの携帯からメールを返すとすぐ、両方に返信が来た。

 涼ちゃんの方には何て返ってきたのか分からないけど、あたしの方には『一舞ちゃんありがとう(^-^)/ごめんね』そう書かれていた。



 自分のケータイを閉じて、涼ちゃんの方へ視線を移す。





 ケータイ画面を見つめる涼ちゃんの瞳が、少し潤んでいるのが分かった。


(よかった…間違ってなかった…)



 きっとこれで兄弟の仲も、前よりは改善されるだろう。そう思いたい。







……………






………














 …数分後。

 涼ちゃんは1人、部屋に戻ってしまったので、雰囲気的に作業は出来ない感じになった。

 仕方なく休憩という形をとることになったけど、さてどうしようか…と、そんな事を思っていると。



「一舞」

一舞
「へ?」


 蓮ちゃんからお声がかかった。



一舞
「なに?」


「……少し、散歩しないか」

一舞
「え…うん」



……………

………







  ザザー…ン……







  ザザー…ン……










「………」

一舞
「………」


 …誘ってくれたはずなんだけど、何故か蓮ちゃんはずっと無言のままだ。

 波打ち際を並んで歩きながら時々、彼の顔を見るんだけど…こちらを見てはくれない。


一舞
「……?」

(…変なの)



 しばらく2人で歩いているうちに、何かを決心したかのように急に蓮ちゃんが立ち止まった。そして目を伏せたまま、こう言った。



「…翔さんと…抱き合っていたのは何だ」

一舞
「…?」

(翔と…抱き合ってた?)


一舞
「………いつの話?」


「……ここに来た初日」

一舞
「…」


「……」

一舞
「………あ」

(アレかな…?)


 確かに、この合宿に来た初日、あたしは翔と抱き合うような形になっていた。

 だけどアレは、それ以上もそれ以下でもない友達としての抱擁だと、あたしは思っていたし、今の今まで忘れていたくらいなのだ。

 だからこんなに思いつめた表情で話題に持ち出されるなんて、もちろん考えていなかった。


一舞
「…見てたの?」


「……偶然な」


 拗ねたような、それでいて悲しそうな。そんな表情の蓮ちゃんがなんだか…まるで、よく知らない人と話してるみたいだ…。

 これはやっぱり、恋愛感情で接してくれるからなんだろうか?告白してくれた時もそうだったけれど、こんな蓮ちゃんを、あたしは知らなかった。



「…どうなんだ?」


 凄く切なげな表情であたしに答えを求めてくる…いつもの俺様キャラが消えてしまっている…。


一舞
「………あたし」


「……」

一舞
「……」


「……」

一舞
「……蓮ちゃんとは付き合えないよ」


「………」



 驚くほど普通に…何ともない言葉を吐くように、あたしの口から滑り落ちた言葉は…

 蓮ちゃんの顔を曇らせた。





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