悲観6



 部室のドアに手をかけると


??
「…終わったか?」

一舞
「………?」


 ドアの隙間から蓮ちゃんの声。



(なんで?…さっき、みんなと一緒に店に行ったはずなのに…)



 待っていてくれたのか、戻ってきてくれたのかはわからなかったけど、ドアの向こうに居るらしい蓮ちゃんの姿を思い浮かべてほんの少し、さっきまでの落ち着かない気持ちが和らいだ気がした。




      ギィ………




 そっと扉を開き…



一舞
「…ごめん…まだ」



 そう言うと、そこに立っていた蓮ちゃんが困ったような顔をした。




「……お前…」

一舞
「…も、ちょっと時間かかっちゃうから…さ…先行ってていいよ」


「………………」


 頑張ったつもりだけど、蓮ちゃんは納得してくれてない感じだ。

 彼はあたしの言葉を無視して部室に入り、扉を閉めてしまった。


一舞
「……え…っと」


「……………」

一舞
「……?」


「…無理するな」

一舞
「……え?」


 蓮ちゃんの口から零れたその声は、今まで聞いたことの無い、優しい声だった。そしてそのまま彼は、まるで壊れモノに触れるみたいに、あたしの手を握る。





一舞
「………蓮…ちゃん?」


「……震えてる…」

一舞
「……ぅ…あは、バレた?」


「…お前でも怖いモノがあったんだな」

一舞
「…………そ……みたい」


 あたしの手をそっと握ったまま、今まで聞いたことの無い優しい声で話す蓮ちゃんは、なんだか凄く不思議だ…。



「…どうすればいい?」

一舞
「………どう…って言われても」


「…お前を安心させたい」

一舞
「……………」


 …なんて答えるのが正解なんだろう。こういう蓮ちゃんは慣れなくて困る。



「…………俺の態度…おかしいか?」

一舞
「……うん…いつもと違う」


「……そうか…じゃあ…おかしいついでに言っておく」

一舞
「…?」


「…俺はお前が好きだ」

一舞
「!!」


「こんなお前を見ていると…俺は……」

一舞
「……………」


「……………」

一舞
「…………………」


「………俺がお前を…守ることはできないか?」

一舞
「………………………」

(…こ…コレって!)


 告白…ってやつですよね?

 蓮ちゃんがあたしにこんな事言うなんて…意外すぎて、何て言ったらいいのかわからない。



「…困らせてるな」

一舞
「え!…違くて……驚いてるだけだよ」


「………そうか……答えは…今じゃなくていい…今はまず着替えろ」

一舞
「……うん」


 蓮ちゃんは、優しい声のままそう言って、部室の外へ出ていった…。

 不思議と震えは和らいでいて、着替えたあと、ドアの前で待っていてくれた蓮ちゃんと学校を後にする…。





 蓮ちゃんは…いったいいつからあたしをそういう風に見ていてくれたんだろう…。



(あたし、蓮ちゃんを傷つけたりしてないよね…?)




 …帰り道を並んで歩きながら、あたしの胸は、チクチクと痛んでいた。





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