悲観5



 頼れる助っ人の登場は、香澄ケータイのGPS機能のおかげだったらしい。つまりは心配性の照ちゃんのおかげ。

 あれ以上、実際どうすれば2人を守れるのかわからなかったから…本当に助かった。


 みんなに庇われながら部室まで移動したあたしは、ボロボロになった制服をどうにか着替えなければならなかった。



「部室に置いてある衣装っつってもあんま種類無いんだけど…」


 そう言って洋ちゃんは、少し前の衣装の箱を引っ張り出してきてくれた。


一舞
「洋ちゃんありがとう…」


「…つーか…大丈夫?」

一舞
「ん?…あぁ、全然!」


 洋ちゃんがあまりにも心配そうに尋ねてくるから笑って見せると、安心したようにため息をついた。



「……にしても…どうしようもねー奴多すぎんな。女子を何だと思ってんだか」


「…………」

香澄
「…アイツら……一舞が本当に女子なのか確かめるとか言ってた」

由紀
「…」


「…涼」


「…わかってる。こんなの黙ってられるか」

一舞
「………」


 涼ちゃんは悔しそうに眉をしかめて部室を出て行った。続いて香澄も照ちゃんも、由紀ちゃんも洋ちゃんも、ずっと無言だった蓮ちゃんも。

 みんな店に向かって行った。




 あたしは1人、部室に残って。洋ちゃんが用意してくれた服に着替える。…でも


一舞
「……………っ」







 ボタンがほとんどなくなったシャツに手をかけた途端、凄い勢いで体が震え出す。




 …正直なところ、すごく怖かった。

 ただ喧嘩するだけなら全然平気。イジメやからかいなんて相手にする気にもならない。でも…まるで獲物にされたあの状況は、ただ怖かった…。



 あたしが女だからなのかな。

 男だったら平気なのかな。


 負けたくないのに、終わってから震える自分の体が、まるで負けたんだと思わせるかのように止まらない…。

 悔しくて涙が出てきそうになる。







      コンコン…




一舞
「!」



 突然、部室のドアがノックされた。



一舞
「?」



 あたしは、涼ちゃんに借りたベストを再び着直して、部室のドアに近づいた。




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