悲観4




「せっかくだから楽しもうよ」

一舞
「…無理。あんたとなんて気持ち悪くて吐きそうだから」


「ふぅん…」




    ブチッ!!



勢いよく弾け飛んだシャツのボタン。その衝撃で…息が止まるかと思った。


「いつまで強がっていられるのかなぁ」

一舞
「!!」


 キリキリと音を立て取り出されたカッター。その刃先が僅かな光を受けて煌めいて、全身が粟立つ…。



一舞
「………つーかさ」

「あぁ?」

一舞
「…こんな事するしか脳が無いなんて、マジで終わってんね。さすが底辺」

「………」





    ザシュッ!!





由紀
「きゃーっ!!!」

香澄
「っ!!」

一舞
「…………」


 あたしの目を見据えたまま、スカートの裾をカッターで切ってみせる…。

 そろそろ苛立ってきたようだ。



「…生意気な女もどきは全部晒してやったら大人しくなるのかなぁ」

一舞
「…ふっ…じゃあ…イケメンきどりのエロガキにはお返しに、その顔でも潰してやったらいいのかな?」

「っ!なめんじゃねーぞコラ!!」

一舞
「……」

(まったく…安い挑発に乗っちゃってさ。じゃ…遠慮無く)




「!!!」




 あたしは、怒りを露わにしてカッターを振りかざすそいつを、思い切り蹴り上げる。

 衝撃でその手からこぼれ落ちたカッターを足で弾いて滑らせると、カシャン!と音を立て薄暗い部屋の隅に消えた。そして、驚いて緩んだ男子の腕を振り払い、そのまま両拳を振り回すと、あたしの拳は、いとも簡単に彼らを捕らえて、一気に形勢は逆転した。




香澄
「きゃぁっ!!」

由紀
「いやぁーっ!!!」


「おっ!お前!静かにしろ!」

「とっ!友達が居んの忘れてねっ!?」

一舞
「あっ!」


 香澄と由紀ちゃんを羽交い締めにして、あたしに向かって何か言っている。

 さっきまで目の前でニヤニヤしていた男子は、あたしの足で踏みつけているし。あたしを押さえていた男子たちは、漏れなく床に転がっている。


一舞
「………抵抗してほしかったんじゃないの?つーか離せよ」


 見下すように言い放つと、2人を押さえる腕に力が加わったのがわかった。


(やばいな…どうしよう)



香澄
「ちょっ!苦しい!」



 香澄が呻いた瞬間。



    バンッ!!!




「香澄!!?」


「わっ!?なんだコレ!?」


一舞
「…あ」


 必死の形相で扉をぶち破って入ってきた照ちゃんに続いて、洋ちゃんがあわあわしながら入ってきた。


(よかった…助かった)




「!!」


「一舞!!?」

一舞
「ん?」

(あ…)


 続いて入ってきた蓮ちゃんと涼ちゃん、2人ともあたしを見るなり顔が変わった。



(わっ…2人とも顔っ顔っ!)


 涼ちゃんは、自分が着ていたベストをあたしに被せるように着せると、あたしの足下で踏みつけにしていた男子を掴んで引きずっていった。

 蓮ちゃんは、周りに転がるように倒れている男子たちを蹴り起こし、1人1人室外へと放り出した。


 …彼らがこれからどうなるのかを想像すると、まぁなんて恐ろしいのかしら。

 それほどに2人ともブチ切れた表情をしていたのだ。




「ギャアァァァァ!!」

一舞
「!?」


「ごっごめんなさぁ〜い!!」



 香澄と由紀ちゃんが居た部屋の隅。

 背後から聞こえた悲痛な叫びに振り向くと…照ちゃんが珍しく、鬼の形相でキレている。


 彼らは照ちゃんを安パイだと言ってたけど、香澄がこんな目に遭わされて黙っているわけがない。

 そんなバイオレンスな風景の横で洋ちゃんは、香澄と由紀ちゃんを庇いながら



「はい。退部決定〜」


 そう言って舌を出した。





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