原因1




 美樹さんと別れて数分後。今は教室で、由紀ちゃんや香澄と一緒に居る。


 さすがにあの部屋で起きたことを話すわけにもいかず、なんとか笑顔を作りながら会話してるけど…笑顔になれるのは、美樹さんと会えたおかげなんだと思う。



 …涼ちゃんの力があんなに強いとは思わなかった。

 そこに驚いているあたしは、なんなんだろう…?


 いくら目線が同じだからって言っても、彼は男の人なんだから当然なのに。それを今まで気づかせなかった、あの優しかった涼ちゃんが、あんな風に豹変していた事…きっと何か理由があるはずだ。


(美樹さんに聞けばわかるかな…?)


 窓の外に目をやると、空はとても青く澄んでいる。


(考えてたって仕方ない。わからないなら確かめればいいんだ)


 美樹さんの存在が、あたしを冷静にしてくれた気がした。



香澄
「美樹ちゃんのニオイがするんだけどぉ〜」



 そう言われて振り返ると、あたしの背中に寄り添い、ニオイ確認をしている香澄の顔がすぐ側にあった。



一舞
「…犬か?」

香澄
「可愛い可愛いチワワだにょん」

一舞
「んじゃあたしは?」

香澄
「いたいけな子猫ちゃん」

一舞
「デカい子猫だね〜」

香澄
「はい自虐禁止〜!これはハートの話なんだから!」

一舞
「っ…」


 強めに返されて思わず絶句する。



一舞
「あたしって今、そんなに弱って見える?」

香澄
「見えますわよ一舞サン。てか、どこで美樹ちゃんと会ったのさ?」

一舞
「どこ…って…………香澄、美樹さんの事知ってんの?」

香澄
「アタシは3年に顔が利くからね〜。美樹ちゃんとはマ・ブ・ダ・チ」

一舞
「…へぇ〜…」



(いいな…あたしも、香澄みたいに仲良くなれるといいな…)



 昔から女子とはなかなか友好的になれないから、こういう出会いは大事にしたい。そんな羨ましい気持ちを抱きながら、慌ただしい一日が過ぎて行った。





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