宴席3 綾と2人で藍原邸に戻ると、どうしても帰らなきゃならないメンバー以外、みんな藍原邸に集まっていた。 (あ、綾カレも居る) 綾 「あっち居ってるわ」 一舞 「うん」 綾は彼氏のところへ駆け寄って行く。広いリビングを見回せば、何人もの部員が寛いでいる。 今夜のイベントは特別大変だったから疲れているみたいだけど、やっぱり楽しかったし表情はみんな生き生きしてる。 由紀 「一舞ちゃん!」 (ん?) 声に気づいて振り向くと、最近門限が無くなった由紀ちゃんが居た。 一舞 「おー!由紀ちゃんお疲れ!」 そう答えるや否や、勢いよくあたしの胸に飛び込んできた。 一舞 「!!…?…由紀ちゃん?…どしたの?」 由紀 「すごく…嬉しいことがあって!」 一舞 「…そっか」 嬉しい事って何だろう?気にはなったけど、喜びに震えているのか、今にも叫びだしたいのを堪えているような彼女があまりにも可愛いから、とにかくその頭を撫で撫でした。 香澄 「あ〜ラブラブぅ〜」 香澄が茶化しながら駆け寄ってくると、由紀ちゃんは香澄にも抱きついた。 なになに?…って感じで、あたしの顔と、抱きついている由紀ちゃんを交互に見ながら驚いている香澄。 一舞 「なんか、すごく嬉しいことがあったんだって」 香澄 「まぁぢぃ〜?良かったねぇ〜!」 そう言って、香澄も由紀ちゃんの頭をこれでもかと撫でた。 一舞 「…ふふっ」 (…こんな由紀ちゃん見るのは初めてだなぁ) なんてほのぼのしていると、学ちゃん達がリビングに入ってきた。 ザワザワと談笑していた声が止み、みんなの意識が学ちゃんに集中する。 一舞 「……」 (…凄いな) やっぱり、こういう存在感だからこそ、みんなを引っ張っていけるんだな…なんて、コッソリ思ったりしてた。 仕事と音楽以外は普通のエロオヤジなんですよ〜。とか、絶対に言えない雰囲気だ。 学 「お疲れお前ら。ん〜じゃ打ち上げ始める前に話聞け」 みんなからよく見える位置に立ち、学ちゃんは全員の姿を確認しながら言う。 (細かい話はミーティングでって言ってたから、ちゃんと聞いておかなきゃ) そう思って、すぐ側にあるソファーに腰をおろした。 …ふと気づくと、いつの間にか隣に翔が居た。 一舞 「…お疲れ」 そう声をかけると 翔 「ん…ちょっと寝るから隠して」 そう言って、翔は目を閉じた。 (今朝早く起こしちゃったもんね、ステージもハードだったし、相当疲れてるのかも…) ![]() とりあえず学ちゃんから見えないように、背中の後ろに翔の寝顔を隠す。 次の瞬間、オーナー演説が始まった。 学 「まずはイベント大成功だった。ありがとう。で、話しておきたい事があるんだが…」 翔 「zz…」 一舞 「……」 学 「俺達のデビューに伴う作業として、合宿をすると言ったが…その合宿には先ほど名前を挙げた5人…《Babies'-breath(ベイビーズブレス)》もついて来てもらう」 一舞 「…!」 (え!?なんで!?てかバンド名いつ決まったん?) 学 「何故なら…だ。お前らがいくら過去にステージを経験していたとは言っても、再び同じように客を惹きつけられる可能性は低い。だから準備が必要だ。合宿の間に、今後の方向性を決めて毎週のライブに耐えうるだけの曲数を増やせ。演奏の腕も磨かなければ客は来ない。わかるな?」 涼 「はい…」 涼ちゃんが真剣な面持ちで返事をした。 一舞 「……」 (そうだよね。確かに経験があるとは言っても、昔のあたし達とは違うもんね…。それに翔たちの後を引き継ぐんだもん、中途半端じゃダメなんだ…) すこし空気が緊張し始めたけど、学ちゃんは構わず続ける。 学 「合宿先は俺の別荘だから、少し早いが卒業旅行も兼ねて楽しめばいい。それから部長交代の件だが…。新部長には、俺たちが合宿に入ると同時に着任してもらうことになるが……あれか?例年同様、ミスコンで決定することになってるらしいな?」 照 「そっすね」 一舞 「…??」 照ちゃんは当然のように答えたけどそんなんで決めていいのでしょうか? 学 「部長は、引き継ぐ後輩を選出してミスコンにかける。投票は終業式の朝で即日開票…で、いいんだよな?」 蓮 「はい。それが恒例ですね」 一舞 「………」 (…蓮ちゃんまで?) 洋 「てか《ミスコンで部長決定イベント》って翔さんが考えたんだよねぇ」 一舞 「え!洋ちゃんソレまじ?」 洋 「まぢまぢまぢ場面で決めたらしい。ね?翔さん!…あ、寝てる」 一舞 「!!!」 (やば!) 学 「…あぁ?」 一舞 「…!!」 (マズい!学ちゃんにバレた!?) 学 「翔…てめぇは毎回毎回…」 さっきまでにこやかだった学ちゃんはやっぱりまだ《仕事モード》だったらしく、翔の居眠りに眉をひくつかせて怒りの表情で迫ってくる。 一舞 「…………」 (ヤバいっ!) (もう!!洋ちゃんの馬鹿ー!) Novel☆top← 書斎← Home← |