進展4



ウェイトレス
「いらっしゃいませ〜、二名様で宜しいですかぁ?」



 数分後、オムライスがメインの洋食屋風のお店に入った。




「…喫煙席」

ウェイトレス
「かしこまりました。ご案内致しますのでコチラへどうぞ」



 ウェイトレスさんから、丁寧に席まで案内されてメニューを開く。



ウェイトレス
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」



 丁寧に頭を下げるウェイトレスさんに見向きもせず、翔はすぐに煙草を吸い始めた。


 それにしても、これだけ煙草吸っててよくあんな綺麗な声で歌えるものだよ。いったい彼の声帯はどうなっているのかしら。

 煙を燻らせる彼の表情をメニューの端から覗きながら、なんだか少し悔しいような気分になった。



「ん?…決まったか?」

一舞
「あ、うん。これ」


 食べたいものを指差すと、翔は軽く手を挙げてウェイトレスを呼んだ。


ウェイトレス
「ご注文を承ります」


「えーとね…」


 そう言ってほんの少し、ウェイトレスさんの方に体を寄せて翔がメニューを指差すと、彼女は真っ赤になってしまった。



一舞
「……」

(わぁ…翔のフェロモンはんぱねー…)


ウェイトレス
「か、かしこまりました。メニュ…をお下げしてもよ、よ、よろしいですか?」


「はい。ありがとう」

ウェイトレス
「しっしつれいいたします!」


 かなり焦った様子で下がって行くウェイトレスさんを見送るあたしと、そんなのまったく気にしていない翔。

 翔にとってはこれも普通のことなのかもしれない。


(慣れてるなぁ…)


一舞
「…てか結局、同じもの頼むんだね」


「……ん?」



 翔は「何かおかしかったか?」って顔をしてあたしを見ている。その顔がまた、あたしにとっては不思議でならない。




「あ、そうか」

一舞
「へ?」



 急に彼は、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。




「お前の方に旗立ててもらうの忘れてた」

一舞
「…………」

(すぐそうやってからかうんだから…)


一舞
「翔なんか嫌〜い」


「ふはっ」

一舞
「………」

(ヒトをからかっといて、よくもそんな爽やかに笑えますね)



















 2人で同じオムライスを食べ、食後のコーヒーを飲みながら次にどこから回るか話し合う。そして翔が食後のタバコをもみ消したあと、彼はすぐに席を立った。




「…時間無くなるから、そろそろ行くか」

一舞
「うん」



 しかし、あたしが自分の荷物を手に取る間に、翔は伝票をサッと取って行ってしまった。


一舞
「え?あ、ちょっと待って?」

(え?あたしそんなにトロかったかな)


 慌てて追いかけたけど、あたしが追いつくより先に会計は終わっていた。



「ほら、行くぞ」

一舞
「……えぇ?」

(なんて手際が良いのか…)




 本当に少しくらいは待っていただきたい。

 オムライスのお店を出て、スタスタ先に行く翔を急いで追いかけ、なんとか彼の服を掴む。




「ん?」

一舞
「はぁ、あたしの分、ちゃんと払うから待ってよ!」


「…いいよ面倒くせぇ」

一舞
「良くないよ」


「……」



 困り顔になっているあたしの頭をポンポンと撫でて、柔らかい声で彼はこう言った。




「いいから奢られとけ。せっかくデートしてんだから、変な顔して細かい事言うな」

一舞
「…へ」

(変な顔って……てか、デート?)



 言われて初めて気がついた。



(本当だ…なんかコレって、デートみたい…)





「ははっ、なんかもっと変な顔になったな?涼とはデートしなかったのか?」

一舞
「う…涼ちゃんの話はしないで」


「悪い…でも早く買い物終わらせないとな」

一舞
「…ん…そだね」



 翔は、ようやく頷いたあたしの手を取って歩き始める。それはとても自然な行為のように思える程の流れだった。

 デートなんて言葉が出た直後なだけに、一瞬躊躇ったけど、手を引っ込めるのもおかしい気がして流れに任せた。







 ショーウィンドウに映るその姿は、恋人っぽい感じにも見えて、手から伝わる温度に少しだけ緊張する。


 しかも翔のフェロモンは大放出中。行き交う人達が振り返る。その視線は自然とあたしにも注がれて、まるで品定めされている気分だ…。



(はぁ…周りの視線が痛いよ…)






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