異変5





『あれから何人と遊んだの?』



 涼ちゃんが耳元で囁いた言葉。あたしを軽蔑した口振りで…



(あたしって、そんな風に見えてたの?離れていた間、涼ちゃんの所に戻ることだけを考えてきたのに…いったい…あたしの何が、そんな風に思わせるの?)


 …混乱の中、乱れた髪をかきあげる涼ちゃんを見る。涼ちゃんは、さっきと少しも変わらない表情で、何事も無かったみたいに机の上の書類を手に取った…。



一舞
「…っ!」



(なんでそんな平然としてるの!?)



 …苛立ちに似た感情を抱えながら、あたしは無我夢中で、得体の知れない部屋を飛び出した。

 もつれる足を投げ出すように、ざわつく感情を振り切るように…中庭を走り抜け、鳴り響くチャイムの中、目から溢れそうな雫をこらえて女子トイレに駆け込む。





 全然意味がわからない。

 悔しいのか悲しいのか、今こみ上げてくる感情の理由さえわからない。







       ギィ……







一舞
「!……」


 扉の開く音がして、我に返った…。

 泣くのを止めた自分を少し滑稽に感じながら、携帯を開く。

 教室に戻る気持ちにはなれなかったけど、香澄からのメールがたくさん来てたから…
とりあえず戻ることにして、涙を拭って平静を装い、個室を出た。





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