新世界3 透瑠 「いったいなぁ…つーか純はライブ前に俺が怪我してもいいの!?」 純 「何を言うとんねん。つかワレどんなけ見境無いねんな。マジでイカレとんちゃうか〜?ん〜ま死んでまえやカス〜」 透瑠 「じゅ〜ん〜?言っていいことと悪いことがあるよ!いくら俺でも怒るからね」 純 「怖ないんじゃボケ!もやしっ子が粋ったとこで所詮もやしやろがぃ」 美樹 「………」 (あの、私…凄く居づらい) 目の前で喧嘩が始まっちゃって、私は1人パニクったうえにビクビクオロオロ状態。 (ど、どうしよう?…止めた方がいいのかな…?てか涼のお兄さん、穏やかな感じに見えたのに普通に殴り合いとかしてるし!なにこれこの状況?怖すぎるよ〜!!) ?? 「おい」 美樹 「んきゃっ!?……あ」 (…翔くん…って人) 翔 「ごめん…大丈夫か?」 美樹 「…あ…はい…私は、大丈夫です」 翔 「悪いな…コイツらの事は気にしなくていいから、ちょっと向こう行っててくれるか?」 美樹 「え…でも」 翔 「原因はだいたいわかってるから。心配すんな」 そう言って、私の肩に優しく手を添え、後ろに向かせる。 …その途端、なんだか急に静かになった。 チラッと…ほんの少しだけ後方を確認してみると… (あれ?居ない…なんで?) 涼 「あ、美樹」 美樹 「!…涼」 客席の方から涼が慌てて走ってきた。 涼 「翔くんコッチ来なかったか?」 美樹 「来たけど…涼のお兄さんと関西弁の人と一緒に消えちゃって…」 涼 「えぇ〜?もうリハ始まるのに」 私は涼と一緒に、店内はもちろん店の外までも探し回った。 結局は誰一人見つけられず戻って来ると、カウンター席に背中を丸めてすわる、涼のお兄さんと関西弁の人。 その2人を、腕組みして見据える翔…さんの姿。 涼 「……なぁ美樹」 美樹 「…何?」 涼 「あの2人…お前に何かした?」 美樹 「え!」 涼 「特に兄貴…」 美樹 「…あ〜…うん」 涼 「…やっぱり」 美樹 「あ、でも関西弁の人が助けてくれたから…別に何も」 涼 「んで、純くんと兄貴が喧嘩になった…ってか?」 美樹 「…?」 涼 「ライブ前に怪我とかしてねーよな?」 美樹 「…」 (え…そっちの心配?) 結局。涼のお兄さんと関西弁の人は、翔さんからこっぴどく叱られたらしく、それ以降私に近寄る事は無かった。 (…なんだか翔さんって凄いな) とか考えながらリハーサルの様子を見ていたんだけど…あのお兄さんたちは、さっきまでとはまるで別人みたいに真剣に演奏している。 立ち位置や動きの確認も、時々冗談が飛び交ってる雰囲気はあるけど真剣そのもの。 (…そうだよね、コレが好きなことを本気でやってる人の姿だよね。うらやましいな) せめて私にも何か手伝えることがあれば、あの輪の中に入れるのに…なんて、なんだか急に一人ぼっちが寂しくなった。 リハーサル終了後。涼はずっと本番の準備を手伝っている。 カウンター席に座り、時計を見ながら帰っていいのか迷っていると ?? 「時間…気になるか?」 そう声をかけられた。 声の主は、この店に入ってから初めて会う女性。長い髪と切れ長の瞳が凄く綺麗だ。 ようやく会えた同性の存在になんだかホッとしていると、カウンターの向こう側からこちらに身を乗り出した体勢で… 弥生 「弥生だ…お前は?」 そう言ってニッコリと微笑みかけてくれた。 美樹 「あ…私…桜井 美樹です。あの私…そろそろ暗くなるし帰らなきゃって思ってて、でも…一緒に来た人がお手伝いしてるから…」 弥生 「美樹か…いい名前だな。お前はこういう場所にはあまり出入りしてなさそうだから疲れただろ」 美樹 「…はい。正直クタクタです」 弥生 「ふふっ素直な奴だな。わかった…ちょっと待ってな」 弥生さんはそう言って、カウンターの奥に消えて行った。 数分後。 私は何故か、蓮くんに…家まで送られることになってしまった。 店を出て、通りを歩き始めても、隣の蓮くんはとても不機嫌な顔をしていて…きっと、どんなに暗闇の道でも、1人の方が怖くないだろうなって…思うほどだった。 Novel☆top← 書斎← Home← |