豹変1 屋上で蓮くんと、授業をサボって話をしたあの日から、周りの対応なんて気にならなくなっていた。 蓮くんにはなんだかイジワルな事言われた感じもあるけど、あの話を聞かせてくれたから元気出して頑張れるようになったんだから、そこは感謝したいと思っていた。 学校で話す相手と言えば涼くらいだけど、それでもアイツの脳天気な顔見てると、それはそれで楽しいかも。とか思える。 女の子同士だからこそ起きてしまうような面倒事も無いし、相手が涼だと好き勝手言えて、かなり楽だってことにも気づいた。 涼 「なにニヤけてんの?お前」 美樹 「ん?…涼と居ると気楽でいいなぁと思って」 いつものように私の前の席に座り、様子を観察してくる涼のその顔を見ると、何故かちょっと笑いそうになっちゃうのは、私がそれだけ大丈夫になった証拠だろう。 涼 「ほぉ〜…じゃあ付き合う?」 美樹 「それはごめんなさい」 涼 「なぁんでだよっ」 美樹 「だって、涼は友達でしょ?それに、蓮くんから彼女居るって聞いてるよ」 涼 「…」 (…あれ?「なんだよバレてたのかー」とか言ってくると思ったのに。黙っちゃった) 涼 「…ふうん…で?蓮のヤローは他に何て?」 美樹 「…え…私、マズい事言っちゃった…?」 目の前の涼は、今まで見たことも無いような鋭い目をして私を見た。 美樹 「…っ」 涼 「…あぁ、マズい事言っちゃったね。だって、とっくに別れてるからな、ソイツとは」 (うそ…) 美樹 「ご…ごめん私…知らなくて」 涼 「……別に…美樹が謝らなくてもいいよ。とりあえず蓮はシメるけど」 美樹 「!?」 (し!?シメるとか何用語!?) この時ばかりは涼が別人に見えた。 お昼休み。なんとなくさっきの様子が気になって、4限から教室に戻って来ない涼を探していた。 (涼のやつ…どこに行っちゃったのかな…) ?? 「あれ?もしかして、桜井さん?」 美樹 「…へ?」 廊下をキョロキョロしながら歩いていた私は、背後から呼び止められて振り返った。 そもそも涼や蓮くん以外の知り合いがいない私を、こうして呼び止めてくれる人は珍しい。そんな興味をそそられて振り向いたそこには、目に眩しい黄色いTシャツ。 美樹 「……?」 ?? 「…うっ…わぁ〜…やっぱかわうぃ〜!」 美樹 「…へ?」 よくわからないけれど、なんだか感動しているらしいその声を追って、視線を上に動かすと、フワフワの茶髪が目線のはるか上で揺れていた。 ?? 「俺ぇ、一組の《洋》ちゃんでっす」 美樹 「……あ…はぁ」 (何故いきなり自己紹介などされているのでしょうか?) 洋 「こんなところで会えるなんて運命だよね〜」 美樹 「や…普通に学校の廊下ですれ違っただけだから」 洋 「小さな運命」 美樹 「………」 (…うわぁ〜ん!!何?このヒト〜!?) たまたま廊下で出会っただけのこのヒト。やけに馴れ馴れしいというか、見た目はギャル男だし、話し方はチャラいし。 身長はたぶん、蓮くんくらい高くて、こんな接近して話していると、とにかく首が痛いのだ。 なんだか見たことあるような無いような顔してるけど、でもたぶん初対面。 とにかく今はこの場から解放してほしいのだけど… 洋 「せっかく会えたんだからぁ、メアド交換しちゃったりしなぁい?」 美樹 「え!?無理!」 洋 「え!?そんな即答!?」 (うぅ!てかアナタは何なんですか?) 美樹 「あの…ごめんなさい、急いでるので」 洋 「あ!待ってよぉ〜!」 (嫌だよぉ!!) 見知らぬチャラ男さんから逃げてきてから数分。 そんなこんなしているうちにお昼休みは終わってしまったけど、教室をチラ見してみても、涼は居ない。 それでもやっぱり、どうしても気になって、胸騒ぎがして…再び探しに走った。 ![]() (あ!) 屋上への階段から降りてきた人影。あの身長に、あの黄色い頭…涼だ。 美樹 「涼!」 涼 「………」 私の声に気づいた素振りは見せたのに、涼は振り向きもせず行ってしまった。 美樹 「…涼」 (やっぱり蓮くんと…?) 怖い気持ちを押し殺して…覚悟を決めて、屋上に上る。 ギィィ… バタンッ… 広い屋上を右へ…左へ…くまなく見てまわる。 そして… (!) 美樹 「きゃっ!?」 物陰に、傷だらけの蓮くんを発見して、私はヘナヘナとその場に座り込んだ…。 Novel☆top← 書斎← Home← |