異変4



 少々荒い力加減で背中を押され、部屋の中心に置かれた大きなソファーに座らされる。

 驚いてはいるけど、辺りを見回して、妙に冷静になった。



 軽音科から続く中庭の奥にある、他の校舎とは異質な建物…その二階にたった1つだけの扉の奥は、広い広い一室になっていた。

 あたしが座っているソファーの前に、大きめのテーブル…そして向かい合わせにまたソファーがあり、ちょっとした応接スペースのようにも見える。

 少し離れたところにあるガラス戸の書棚には、たくさんの書類が並べられていて。ここで事務的なことが行われているのだろうとわかる。

 そしてもう一角にはカウチソファーが置かれ、冷蔵庫やテレビもそこに設置され…壁面には大きな窓が並び、その向こうにはガーデンテーブルのようなものが見える…ベランダに出られるようだ。

 よくよく見渡すと、キッチンやトイレも完備されている様子で、まるで誰かの家のような空間…。


(…あれ?)


 すっかり部屋の雰囲気に呑まれていたあたしは、涼ちゃんを見失っていた。再び周りを見回して、彼を探す。



一舞
「!!!」



 再び涼ちゃんを視界に捉えた途端、ソファーの座面に頭が付くのがわかった。





 すぐ近くには涼ちゃんの冷たい目と、真っ黒な髪…体中の血の気が引くのを感じた。


(涼ちゃんはあたしを憎んでる…?何故?)




 あの繊細な手が、あたしの頬に触れ…そっと顔を近づけながら、耳元で彼が何かを囁いた。


 その瞬間。体中の血が逆流するような、ザワザワとした感覚がして、あたしは咄嗟に思いっきり体を引き剥がし、体制を立て直す。

 涼ちゃんは驚きもせずあたしを一瞥して、離れていった。






 もう…意味がわからない…。





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