出会い



美樹
「見〜え〜な〜い〜」


 自分の身長が足りないことを呪う瞬間その@。


(てかなんでみんなこんなに発育がいいのよ〜!)


 晴れて志望高校に入学した私の目の前には、クラス分けが貼り出された大きな掲示板と、その前に群がる人々。

 どんなに頑張ってジャンプしても、チビなうえに掲示板が遠すぎて全くわからない。それでもなんとか自分の名前を見つけようと、何度もトライする。

 すると背後から…


??
「ぷっ」

美樹
「!」

(…今、誰か笑った?)


 跳ぶのをやめて、笑い声が聞こえた方向に恐る恐る目線を向けると。





??
「あ。ごめん、聞こえた?…くくっ」



 振り向いた目線の先、そこにはニヤニヤ笑いながら立っている…たぶんだけど、私と身長がさほど変わらない男子。

 遠くて顔まではよくわからないけど、私くらいチビのくせに頭は真っ黄色で、新入生のクセに、すでに制服は着崩されてる。

 見るからに友達にはなり得ないタイプだ。





美樹
「……アンタ何笑ってんのよ」

??
「いや、別に」

美樹
「アンタだってどうせ見えないでしょ?」

??
「…まぁ。俺はそんな必死にならなくてもわかるから。くふっ」

美樹
「はぁ?何ソレ?」


 距離を保ったままの会話。なんて言うか、バカにされてるのがよくわかるから…やっぱり嫌。


(てゆーか君。余裕ぶってる意味がわからないからね)


 笑われた事で気分も悪いし、それ以上、彼と話すのが嫌になっていると…


??
「涼」


 人混みが出来ている方から、やけに背の高い男子が、黄色い頭のチビっ子に近づいていく。


(黄色い頭のチビっ子…《りょう》って名前なんだ)



「お〜蓮。どうだった?」


(背が高い方は《れん》くんか…)



「お前は三組。俺は五組」


「サンキュー」

美樹
「………」

(…なるほどね)


(…いいなぁ。ついでに私のも見てくれないかな)



 掲示板の前では、自分のクラスがわかっても、友達同士で盛り上がっていてなかなか散らばってくれない。

 おかげで私みたいなチビは、いつまでたっても自分の居場所がわからない。


(…ホント勘弁してよね〜)



 音楽系の科目が主力な学風と制服が気に入って、どうしても入りたかった高校。

 実家からは遠いけどやっぱり諦めたくなくて、一人暮らししてまで此処にいる。

 当然、中学の友達はみんな地元の高校に行っちゃったから…今この場所には友達すらいない私。


(はぁ…心細いな…)


 笑われてしまってからすっかり、ジャンプすることも諦めてしまった私を



「ふっ」


 また笑う声が聞こえた。


美樹
「………はぁ」


「あ。ごめん、聞こえたぁ?」



(…なんか疲れちゃったな………もういいや。騒ぎが治まるのを待とう)



 そう思ってその場を離れようとすると



「名前は?」

美樹
「…え?」






「名前教えて…見てきてあげるから」

美樹
「………(キュン…)」


 声をかけられて顔を上げると、《れん》くんがそこに居て…



「……顔…赤い…てか名前、いいの?」


(はっ!!)

美樹
「わっえ…っと、桜井…美樹…です」


「…桜井さんね。ちょっと待ってて…」

美樹
「…う、うん」


 《れん》くん……さっきは後ろ姿だったし、遠目だったからわからなかったけど…間近に見た彼は、超イケメン!

 てか、私の人生の中で、あんな綺麗な男子初めて見たかもってくらい凄くカッコいい…!


 私は、うっかり赤くなった顔に気づきもせず《れん》くんの後ろ姿を見つめていた…。



















 少しして…《れん》くんがこちらに向きを変え、戻ってくる。




「…桜井さんは…涼と一緒だな」


「俺と?」


(げっ!チビの方と一緒だなんて)


 そう思って、近づいてきたチビっ子の方へ目線を向ける。


美樹
「!」

(あら、可愛い顔…)



「そうかそうか。桜井さんだっけ?コイツは斉藤 蓮で、俺は浅葱 涼。よろしくな〜」

美樹
「…あ…うん、よろしく」



 《りょう》…って言ったっけ?



(顔面…女の子みたい)


美樹
「ふっ」



 ついクスッとしてしまう私に、再び《れん》くんの影が被った。



美樹
「!」


「…よろしく」

美樹
「よっよろしく……それから蓮くん…ありがとう」


「いいえ…」



 なんだかこの…ちょっと素っ気ない感じが益々ツボで。

 《れん》くんとはせめて仲良くなりたい、なんて…そんな気持ちを抱き始めていた。






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