覚醒3



―――――――side 蓮

部活終了後。店の出入り口で、珍しく 美樹が俺を待っていた。


美樹
「…おつかれ」


「…あぁ」


 俺の気配に少し振り向きかけた美樹と、目も合わせず言葉を交わす。口をきくのはいつ以来だろう?相変わらず、嫌そうな顔をする。



「…何をしている。早く帰れ」

美樹
「用が有るから残ってるのよ」


「…ほう。で?」

美樹
「…アンタに頼みがあるんだけど」


「俺に?…だが、人にものを頼む態度じゃないな」

美樹
「そんな事、今は問題じゃないのよ」


「………」


 俺の目をキッと見据えてハッキリとした口調で切り返してくる。この気丈さは、俺との事件の賜物だな。



「…あっそ?じゃあ聞きましょうか?」

美樹
「……蓮も…涼の様子がおかしいこと、気づいてるでしょ?」


「…あぁ…まぁなんとなくな……それがどうかしたのか?」

美樹
「…じゃあそれが…一舞絡みだってことも分かるよね?」


「……あぁ…で?」

美樹
「てかアンタ。一舞が好きなんでしょ?」


(!?)


「そ!…それとこれと、何の関係が…」

美樹
「だったら、涼の気持ち…わかるよね?」


「…」

美樹
「…涼をなんとかして」


「は?」

美樹
「心配なのよ。でも私じゃ…何も出来なかったから…」


「…お前、まさか」

美樹
「そうだよ。私は…涼のこと……大切な…」


 美樹の大きな瞳が、今にも泣きそうに潤んでいる。



「…面倒だから泣くのはやめろ」

美樹
「わ!わかってるわよ!アンタの前では二度と泣かない!」



(あぁ、あの時は悪かったよ…)



「……まぁ…お前には、借りがあるからな」

美樹
「…?」




「あー!!やぁっぱりまだ此処にいたんだぁ!美樹ちゃ〜ん!!…って蓮も居んじゃん!?」



 不思議そうに首を傾げる美樹の背後から、洋が馬鹿丸だしで走ってくるのが見える。




「なんだ。あの馬鹿を撒いてまで俺を待っていたのか」

美樹
「…洋は何も知らないから」



(なるほど…)



「俺が何か言ったところで状況が変わるとは思えないが…今回だけは言うことを聞いてやる」



 それだけ言って、美樹に背を向けた。



美樹
「…お礼は言わないからね」



(…わかってるよ…………しかし相変わらず、美樹の側にはいつも洋が纏わりついてるんだな)




「…しっかり送れよ」


 無意識に独り言を呟いて俺の足は、涼の家に向かって行った。





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