覚醒1



―[藍原邸]―――――――――午後3時


ただ考えていることに飽きて…なんとなく翔の部屋へ足を運ぶ。



       ガチャ…


一舞
「…おじゃましまーす。…翔、居る?」


 いつからか、ドアの鍵はいつでも開いている状態になっている。


 ノックもせずに入った部屋。翔は居ない。



(…あ、そっか。学校行ってるよね)


 家に居ないのだから、会うはずがない。そのことに気づいて、不思議と少しホッとした。


 相変わらず殺風景な室内…翔のニオイがする。


一舞
「…」


 居ないのはわかったけど、まだ此処に居たくて…ベッドにもたれて床に座る。…静かで、本当に物音ひとつしない室内。



(…翔って香水使ってたっけ?)



 なんて考えちゃうくらい、部屋に残る甘い香りは、あたしの鼻をくすぐる。


一舞
「…はぁ…どうしたらいいのかな」


 涼ちゃんのとのことを、いったいどうしたらいいのか、まだ迷っている。

 このまま恋人でいるわけにはいかないのは、いくらあたしでもわかるから…グルグル迷う心に何か決定打が欲しい。

 翔なら…教えてくれる気がするんだ。何故かそんな風に感じていた。








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