衝動6



―――――――side 一舞

『テメェ1人にしとくのが心配なんだよ!』

 乱暴に言い放たれた言葉だったんだけど、何故だか胸がドキンと高鳴った。

 声が詰まったように出なくなって、高鳴ったままの鼓動が自分の耳に響いている。翔の顔から目が離せなくて…でもそんなあたしに応えるように、翔も目線を逸らしてくれないから、なんだか妙な気分になってくる…。


一舞
「…翔が…居てくれるんじゃないの?」


 なんて事を口走っているんだあたし。

 自分でも何故あんなことを言ったのかわからない。その言葉を発したあたしの手は翔の服の裾を掴んでいたし、泣きすぎたせいなのか、翔と怒鳴り合ったせいなのか、頭はクラクラしていて…

 翔の顔が近づいてくるのがスローモーションのように見えた。










「「かずまーー!!」」



「「!!!」」



 唇が触れるか触れないかの寸前。

 一階から、今まで聞いたことないくらい大きな声であたしを呼ぶ、香澄の声が聞こえた。




 慌てて翔がそっぽを向く。

 あたしも、顔から火が出るんじゃないかという勢いで、全身が熱くなった。



「…わ、悪い」


 翔が小さく謝って、物凄いスピードで部屋を出て行った。

 入れ替わりに入ってきた香澄が、怪訝な顔で翔が行った方向を見ている。


香澄
「……てか…兄貴となんかあったの?」

一舞
「ん?…べっ別にぃ」


 言えるわけがない。


(てかホント…もう!なんなの?あたし!?)



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