衝動5



―――――――side 翔

 一舞の話は一応わかった。…まさかそんな話を聞くことになるとは思ってなかったけど確かに、恋人同士にとっては重要な問題だからな。

 ただ、涼があまり気にしない奴ならいいが…運悪くアイツは、必要以上に気にするタイプだ。この場合…俺がしてやれることなんてあるんだろうか…。


 俺の胸に顔を埋めたまま、まるで子供みたいな表情をしている一舞。涼には悪いが、言い知れない感情が、じわじわと湧いてくるようだ。ただし俺は今のところ《抱き枕》なんだが…。


(…まったく)


 この警戒心の無さは、どういうことなんだろうな。まあ《抱き枕》なんだから仕方ないが。



「…香澄が心配してたけど…呼ぼうか?」

一舞
「…ううん…あたしから後で電話する」


「平気なのか?…女同士のほうが話しやすいんじゃないのか?」

一舞
「……大丈夫だよだって…こんなことで呼び出したら、照ちゃんに悪い」


「…」

(何言ってんだ。照だってそこまで器小さかねーだろ)


「ちょっと携帯貸せ」

一舞
「え、ヤダ」


「いいから出せ、犯すぞ」

一舞
「はぁ!?」


「!…おっ!?」


 勢いよく俺を突き放した一舞は、途端に怒った表情になった。

 怒らせたのは俺だが、こいつだって勘違いしすぎだからな。


一舞
「なに急に豹変してんだよハゲ!」


「誰がハゲだ。早く携帯渡せって言ってんだろが」

一舞
「つかなんで渡さなきゃなんないんだっての!」


「お前が誰も呼ばないなら俺が呼んでやる!」

一舞
「だから要らないって言ってんでしょ!?わけわかんないー!!」


「わけわかれこのガキ!テメェ1人にしとくのが心配なんだよ!」

一舞
「!…」


「!…」

(あ…今のはちょっと…微妙か?)


「…だ…だから…貸せって」

一舞
「…」


「…」


 少しの沈黙のあと。


 一舞の口から出た言葉に…


 俺の理性はぶっ飛んだ…





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