衝動3



―[藍原邸]―――――――――――side 一舞


一舞
「………」


 翔が用意してくれた冷たいタオルを、腫れ始めた瞼に乗せ、少し冷静になった。


 こんなに泣いたのは初めてだ。しかも、翔や透瑠くんが居たのに泣くなんて、自分が信じられない。

 今更だということもわかっていながら、恥ずかしさを抑えられず、とにかく強く、タオルを顔に押し当てた。



「…ちょっとは落ち着いたか?…お前の家には香澄から連絡入れてもらったから。今日はここに泊まっていけよな」

一舞
「えっ!?」

(とっ、泊まる!?)


 突然、翔がそんなことを言うから、驚いてソファーからぬいぐるみを幾つも落としてしまった。



「香澄の部屋なら問題ないだろ。それに…そんな泣きはらした顔で、帰せないからな」

一舞
「…あ」

(…そっか…そだよね)



「それに…」

一舞
「…?」


「このまま帰すのは…俺だって心配なんだ…」


 少し声のボリュームを落として、そう言ってくれた言葉に、また涙が出そうになった。


(…こんなに迷惑かけて…心配かけて。あたし…ダメだな…こんなんじゃ)

一舞
「…ありがとう」


「…ん」


 泣きすぎて開かない瞼。更には恥ずかしくて、顔からタオルを外せないけど…翔がすぐ側に居ることはなんとなくわかる。

 あたしのすぐ隣で、あたしを見ていることも。その表情が、心配に彩られていることも…。


(優しい人ばかりだな…)


 こんなに優しくされてるのに、自分の事を何も伝えないなんてダメだ…そう思って、顔を上げられないままだけど、タオルを膝に置き、思い切って、言葉にする。


一舞
「…ねえ、翔?」


「…なに」

一舞
「話…聞いてくれる?」


「……あぁ…何だ?」

一舞
「…あのね?」


 あたしは静かに、少しずつ…涼ちゃんとの間に起こってしまったことを、話すことにした。







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