衝動1



―――――――side 香澄

「えぇっ!!?」


「!?」ビクッ!

香澄
「うん、うん…それで?…え、じゃ、じゃあアタシ行こうか?…うん。うん。…平気なの?…後で……そか……わかった…ありがと、お兄ちゃん…」


 突然の兄貴からの電話。いったいなにがあったのか分らないけど、一舞と涼ちゃんとの間にトラブルが起きたみたい。


(…どうしよう)


 通話が切れたケータイを見つめながら、困惑…。

 兄貴からの要請は単純に「一舞の代わりに連絡を」ってことだった。

 女同士の方が話やすいんじゃないかという兄貴なりの気遣いのようだったけど、兄貴は兄貴でかなり混乱していた様子が声から伝わってきた。

 あの、いつでも落ち着き払った兄が混乱するなんて余程の事態だと思う。そう思うと今の一舞の状態が心配でたまらない。



「…何?どした?」


 照が心配そうに、アタシの肩に顔を乗せて聞いてきた。でもこんなの、どう答えたらいいのか、アタシのほうが聞きたいくらいだ。


香澄
「…一舞がね?…大変みたいなの」


「…一舞?」


 伝えられる説明はそんなもの。とりあえずまずは、兄貴に言われた通り、華ちゃんに連絡入れなきゃ…。


(…あとは美樹ちゃんかな)


 華ちゃんへの連絡は問題無く完了し、登録アドレスの中から、今最も頼れるであろう美樹ちゃんに電話する。



     プルルルル…      プルルルル…



美樹
『もしもし?どうしたの?』

香澄
「あ、あのね?」


 …電話越しに説明しながら、美樹ちゃんの声を聞いてたら、なんでか泣けてきた。やっぱり涼ちゃんとの事、応援するべきじゃなかったかも…とか思っちゃって…。

 だけど、美樹ちゃんに伝えておけば、涼ちゃんの方はなんとかなるはずだし。


(後で実家に戻ろうかな…)



「なぁ…一舞と涼、何かあったのか?」

香澄
「…うん…今はどう説明していいかわかんないから、ちょっと待ってね」


 照にそう言って、後で実家に行くことを伝えた。今すぐ行きたいって思ってたけど、兄貴に確認したら、もう少し落ち着くまで待てって言われたから…アタシまで落ち着かないまま、半泣きでその時を待っていた。




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