異変2



 中庭のその奥に、大きな扉で閉ざされた重厚感のある建物。幸い、今の時間は使われてないみたいだ。

 扉に手を掛け、力を込めて引くと、扉の重さに比例してズッシリとした空気の圧力を感じる。

 中へ入ると、広々としたエントランス。入り口から直線上に大きな防音扉。向かって右に別の入り口と、左に広い階段。

 正面の防音扉の中を覗くとそこは…

 広々としたホールに、客席とステージ。高い天井を見上げると、二階席もある…まるでアリーナ並みだ。


(これがコンサートホール…?)


 なんて環境なんだろうか、ちょっと腰が抜けそうになった。


 ゆっくりとホールを出て、再びエントランス内を見回す。


 きっと、もう1つの扉は練習棟に続いているんだろう。ならば、次に向かうのは二階しか無い。

 あたしは照ちゃんからの忠告に背いて、広々とした階段を登ってみた。








 幅が広く、上に行くに従って緩やかにカーブしていく階段。上りきるとそこは、赤絨毯が敷かれたフロアになっている。

 だけどなんて言うか、異質だ…。
 このフロアには小さな窓と、大きな両開きの扉が一つずつ。


 扉の上に大きく《STAFF ONLY》の文字が掲げられている。





一舞
「…何コレ??」



 ドキドキしながら、思わず扉に手を伸ばした…。














      ガシャン…!








 手が触れる直前で扉が開き、あたしは慌てて手を引っ込める。


 中から顔を出したのは…





「……アンタ……………ここで何してんの?」




 長い前髪の隙間から、あたしを鋭く見据えている涼ちゃんだ…。



(この前も思ったけど……なんだか違う人みたい)


 いつも一緒にいた頃に金色だった髪は、今は真っ黒で長く伸びて…優しい雰囲気を湛えていた目は、鋭くつり上がって見える。

 いったい……どうしてなんだろう…?





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