「え?」
「や、だからわしと付き合わへん?って」
何言ってんだこの人。
「先輩彼女いませんでしたっけ?」
「おるけど」
「…」
そんな爽やかな顔で肯定されてもなぁ。
わたしは身の危険を感じ起き上がり隣に座り直す。
というかとりあえず全力でここから逃げたほうがいい気がするんだけどがっちりと手を掴まれた。何故?
「彼女がいるかいないかなんて問題やないやろ」
いやいやいや何言ってんのこの人。理解不能なんだけど。
というか理解したくないんだけど。
わたしが今吉先輩を好きだったのは過去の話だ。
もう今は恋愛的に好きなわけじゃないから、何も迷うことはない。
強気でいくんだ、わたし!
「いや、問題ですから」
「んー、だめ?」
「180cmのなりの人がかわいいふりしてもかわいくないですから!」
「ほんとみょうじはひどいわぁ」
よく考えるんだなまえ。
要は浮気相手ってことでしょ?
それって普通に駄目でしょ。
わたしは今吉先輩を好きなんかじゃない、わたしは今吉先輩を好きなんかじゃない、わたしは今吉先輩を好きなんかじゃない、わたしは今吉先輩を好きなんかじゃない
よし、大丈夫。わたしが今吉先輩からの変な告白を受け入れる理由はない。
「なぁ、みょうじ」
「はいっ」
「わしな、ほんまみょうじのこと好きやで」
信じてもらえんと思うけどな、と今吉先輩は切なそうな笑みを浮かべた。
ちくり、と胸が痛むような気がした。
「…」
「若松と毎日楽しそうに部活に来るのも嫌やし練習後諏佐と仲良く話してるのも嫌や。これを恋って言わな何て言うと思う?」
今現在彼女がいる今吉先輩の言葉は正直説得力に欠ける。
でも、胸が痛んだりと少しでも期待してしまうわたしはどうしたらいいのだろう。
「…です」
「なんや?よう聞こえんわ」
「今吉先輩は狡いです…」
「なんやそれ」
あぁ、駄目だと頭では理解しているのに。
わたしは今吉先輩が好きじゃないはずなのに。
「みょうじ」
「な、何ですか?」
「今からな、みょうじにキスするで」
「は?」
思わず今吉先輩の方を見てしまったのが敗因だ。
顎をおさえられた。
「拒否したらみょうじのことは諦めるわ。せやけど拒否せんかったらわしと付き合ってくれると捉えるからな」
心に迷いがあったのが、
もう好きじゃないのにときめいたのが、
嘘だとしても切なそうに好きと言われ心が完全に傾いてしまったのが、
いけなかったんだ。
所詮言い訳だけど。
認めてしまえば楽
気づいた時にはもう唇が触れ合っていた。
-END-
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