私は桐皇学園高校男子バスケットボール部のマネージャーをしている。
過去の実績はほぼないけれど最近はスカウトに力を入れていて全国から有望な選手を集め着々と力をつけている高校。
周りからは"新鋭の暴君"なんても言われてるみたい。
「みょうじ何ぼーっとしとるん?」
「今吉先輩、」
わしゃ、っと頭を掴まれた。
この嘘臭い笑顔を貼り付けた人は3年生が引退した今桐皇バスケ部我等が主将になった2年生の今吉翔一先輩だ。
「えっと、今日の夜ご飯について考えてました」
ちなみにわたしはこの人から勧誘されてバスケ部に入った。
中学時代にわたしが男子バスケ部のマネージャーだったことを知ってて勧誘したみたい。
正直高校では部活入らないつもりだったけど断る理由もなかったしね。
それに思ってたより楽しくて入ってよかったなって思ってる。
「…そこは嘘でもバスケって言ってほしかったわ」
「わー!髪がぼさぼさになるからわちゃわちゃしないでください!すいませんバスケについて考えてました」
嘘臭い笑顔が特徴の今吉先輩だけど私は嫌いじゃない。今吉先輩がバスケ部に誘ってくれたから今の私がここにいて日々楽しく過ごせてるわけだから感謝してる。
「あ、」
「どうしたんですか?」
「彼女のこと待たせてるんや。戸締まり任せてもええか?」
「…しょうがないからいいですよ。っていうか部活中ずっと待たせてたんですか!?早く行ってあげてくださいよ」
「すまんなぁ。じゃあお先に」
嫌いじゃないけど好きでもない。
彼女だっているんだから。
好きな時期もなかったことはないけど、今吉先輩の目に私が恋愛的にうつることはないんだと思う。 彼女もできたし諦めた。
今はただの先輩と後輩。
だけど、いつからだろう。
「授業サボったらあかんて何回言ったらわかるんや?」
「…そういう今吉先輩だって。今授業中じゃないですか、説得力ないですよ」
少しだるくて珍しく授業をサボって部室のベンチに寝転んでいたら先輩が来た。
ちなみに何回言ったらわかるとか言われたけど月に1回くらいだからね!サボるの!
わしはいいんや、とわたしの枕元におもむろに座る。
「なんでわたしがサボるとその場所に高確率で今吉先輩が来るんですか?常にサボってるんですか?それともストーカーですか?」
「んなわけないやろ、自分あほやな」
「あほって…。ジョークですもん!」
毎回たまたまや、って言いながら今吉先輩の手がわたしの髪を触れる。
「まぁそんなみょうじも嫌いやないけどな」
「何ですかそれ」
あぁ、もうやめてよ。
わたしは今吉先輩を諦めたんだ。髪をそんな優しく触ったり嫌いじゃないとか言われたら恋愛的な意味じゃなくても少し胸が高鳴っちゃうじゃん。
今吉先輩は残酷な人だ。
「なぁ、みょうじ」
「何ですか?」
「わしと付き合ってくれへん?」
「え?」
禁じられた恋人
憧れが恋愛へと変わり、でもやっぱり諦めて
でも心のどこかでは諦めきれてなかったのかもしれない。
ーENDー
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