『ピンポーン』




パソコンで時間を確認すれば午前一時半。
もうこんな時間か…。
よく俺もこんな時間まで仕事を頑張ったと思う、自画自賛したい。
まぁ本当は彼女のことを考えていただけなんだけど。俺がこの世で一番大嫌いなあの男の彼女のことを。




『ピンポーン…ピンポンピンポンピンポンピンポーン』




彼女のことをいつから好きなのかなんて覚えていない。
俺が甘い言葉を囁けば落とせない女はいない、なのに彼女はそんな俺の言葉をさらりとかわす。
こんなことは初めてだった。




「いざやー!居留守使うな!起きてるのわかってるんだから!」




ドアを閉めていてもはっきり聞こえる彼女の声。
相変わらず酔っ払ってるらしい。そろそろ近所迷惑になると思い重い腰を上げる。




「これ以上無視するなら警察よぶよー!」


「逆になまえが警察に連れていかれるよ」


「あ、やっぱ起きてたんだ。終電逃したから泊めて」


「…」



目の前には語尾にハートマークがつきそうなほど笑顔のなまえ。

彼女は確信犯だ。毎回家の前で叫べば家に入れてくれると思っている。まぁその手口をわかっていて家に入れる俺も俺だけど。



***



「臨也、みず」


「はいはい」




例えば好きな女が今、自分の家のソファで横になっている(ほぼ毎週見る光景)。
でもそれは大嫌いなシズちゃんの彼女。




「あのさ毎回こんな泥酔するほど飲むのやめたら?飲むとしても終電に間に合うように店を出るとか。もしくは池袋で飲みなよ」




ふわふわと柔らかそうな茶色い髪に白い肌。
何で俺のものじゃなくて奴のものなのか。




「別にどこで飲もうが私の勝手だもん」


「まぁ勝手だけど俺の迷惑とか考えないの?っていうかシズちゃん知らないでしょ?なまえが毎回俺のところに泊まってるの」


「臨也の迷惑とか考えたことないね。静雄は知らないよ、言ったら殺されるのは臨也だし」





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