ねぇ


「かわいいだろ?うちの娘と嫁さん」


あたしが貴方のこと好きだったの

「はい、かわいいねー」


知らないよね?


***


「お前本当に思ってるか?」


あの日も食堂でたまたま一緒になってしまったマースののろけを聞かされる。


「思ってるわよ」
「ならいいけど。なまえ、お前もそろそろ結婚…「よけいなお世話よ」」

結婚なんて…しない。
あたしが好きだった男は知らない女にとられて。まぁ失恋したわけだけどまだその男のこと想ってる。


「ロイとかいいんじゃねぇか?ほら、お前ら仲いいし」

「あんな女たらしは結婚するに値しないわよ。浮気なんてされたらたまったもんじゃないし」


だからあたしは貴方が好きなんだって。

「そうかー、でもロイは…」

「なんか言った?」

「いや、なんでもねぇよ。でも、こんな美人がほっとかれるなんて世も末だな」


本当にそんなこと思ってる?
お世辞ならやめてよ。


「本当、この国の男どもはどうかしてるわ。というかそう思うならマースがあたしをもらってよ。」

「無理だ。俺にはグレイシアがいるからな。まぁ2、3年したら愛人になってもいいぞ」

「じゃー2年後のために女を磨こうかな」


もちろん全部冗談。
あたしは冗談で言ってるつもりないけど。
本気で女磨くつもり。


「まぁ死ななきなゃそのうち結婚だってできるだろうよ。だから生きろよ」


そう言って貴方はあたしの頭をなでる。
殺人兵器のあたしとは違う、優しい手。


「その言葉、そのまま返すわ。あんた錬金術師でもないのに無茶して死んでみなさい。奥さんとエリシアちゃんが悲しむわよ」

「まぁあいつが大総統になるまでは死なないから安心しろ。じゃあそろそろ戻るわ」


空になった皿たちをトレーに乗せマースは席を立つ。


「あ、少し話したいことあるから仕事終わってからな」



これが最期の言葉になった。




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