「ただいま」


雨の中家へ帰ると


「あ、おかえりー」

「にゃー」


そこにはいつもどおりに私を迎えてくれるなまえと


「見て、にゃんこ!」


初めて見る小さな黒猫が彼女の腕の中にいた。


「うん。猫なのは見てわかる。それどうしたんだ?」

「買い物の帰りに拾ったの。雨に打たれてかわいそうだったから…。この子かわいいでしょ」


にぱっと笑い猫を頬にすり寄せる。
正直、猫よりも猫の話してるなまえの方がかわいいと思ってしまった。
とくに生き生きした笑顔とか。


「あぁ、そうだな」

「飼っていい?」

「駄目だ。なまえに世話はできない」

「ぶー。ロイのけちんぼ。あ、1回抱っこしてみ」


はい、と猫を差し出される。

…猫は明らかに私に対して威嚇しているように見える。

手伸ばしたらやばいよな


「…」

「どうしたの?抱っこ駄目?それなら撫でてみて!かわいくて飼いたくなるよ」


目を輝かせている。
しょうがなく手を猫に近付ける。


「カプッ」

「い"っ…」


だいたい予想はしていたがやっぱり猫に指を噛まれた。

猫って肉食動物だよな。この猫は小さくても立派な歯を持っていてさすがに痛かった。


「ちょっと!にゃんこ、めだよ!…ロイ大丈夫?」


私の手をとって噛まれた指に触れるなまえ。

指からは少し血がにじんでいた。


「あぁ大丈夫だ」

「ごめん。あたしのせいでロイに怪我させちゃった」


しゅん、となまえは落ち込む。


「この子。元いたところに置いてくるね。ロイの言うとおりあたしじゃきっとこの子の世話できないだろうし。もっといい飼い主見つかるだろうし」


なまえは作り笑いをして猫を抱き家を出ようとする。


「ちょっと待て」

「…何?」

「こんな雨の中、また外に戻すのかわいそうだろ。ここにおいとけ」


なまえは私の言っている意味がわからないらしく首を傾げる。


「ん?」

「だから…、その猫飼うぞ」

「…ほ、本当に!?」

「あぁ」

「ありがとう!ロイ大好きっ!!」


そう言うなまえの顔には笑顔が戻った。


君の笑顔のために

(ねーねーにゃんこの名前なににする?)
(なまえが考えていいよ?)
(だめ!!二人で考えるの!)



-END-




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