「……!?」
夢を見た。
「…なんだ、夢か」
イシュバールで死んでなまえを悲しませる夢を。
「今からだって言うのに」
隣を見れば寝息をたててなまえが眠っている。
「よし、準備するか」
彼女を起こさないよう静かにベッドから出る。
『え?』
『だから…。イシュバール殲滅戦に召集された』
『イシュバールって今内乱が激しいあそこ?』
『そうだ』
彼女は顔を真っ青にして床に座り込む。
『やだ…。行かないでよ』
『命令なんだ』
『…』
彼女の目からは大粒の涙。
なまえの涙を初めて見たと思う。
私が泣かせた。
罪悪感でいっぱいだった。
これが二週間程前の話。
そして今日がイシュバール殲滅戦に出発する日だ。
「しばらくは会えないな」
着替えが終わり寝ているなまえの額にキスを落とす。
否、もう二度と会えないかもしれない
「…ん。……ロイ?」
部屋を出ようとした瞬間名前を呼ばれる。
「おはよう、なまえ」
「ん、おはよ。…その格好。…もう行っちゃうんだね」
軍服を着ているのを見てなまえは辛そうに笑い起き上がる。
「あぁ」
「気を…つけてね」
「あぁ」
「あたし、ずっとここで待ってるからね」
「あぁ」
「だから…絶対戻ってきてね」
「…多分な」
"絶対に"なんて…
あり得ないから気休めのためでも言えない。
-END-
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