「なぁなまえ、帰らないのか?」
窓の外を眺めてた。外は真っ暗。天気は雨。
「んー」
町が光っててきれいとか柄にもないこと思ってみる。
「どっちだ?」
「んー」
「人の話聞いてるか?」
「んー」
はぁ、とロイがため息をついた気がする。
でも聞こえないふり。
ただかまってほしいだけ。
「私はもう帰るぞ、いいのか?」
「んー」
ロイが帰ろうとする姿が窓ガラスに写る。
ぱたんと執務室のドアが閉まる音。
こんな雨の日にレディ1人残して帰るなんてひどい男。
「…」
まぁロイの話聞いてないふりしてたあたしも悪いからロイをひどいなんて悪く言えない
「ロイのばか。無能。女たらし」
悪口言ってみるけど声は虚しく雨音に消される。
「あー、泣きたくなってきた。そういえば…傘持ってきてない」
素直になれない自分に自己嫌悪。
今日の降水確率90%だったのに傘もってこなかった自分にも自己嫌悪。
「そういえば、傘持ってきたか?」
いきなりロイがドアを開けて顔を出す。
びっくりした。
「帰ったんじゃないの?」
「そのつもりだったがなまえが傘持ってるか心配になってね」
お前はあたしの保護者か!?
「……持ってきてない」
「やっぱりな」
笑われた。
でも嫌な気分じゃなかった。
「そういうロイは持ってきたの?」
「あぁ、だからきっと傘持ってないであろうなまえに貸しにきたのだがさっき気づいた。…私も持ってきてなかった」
「ははは。バカでしょ。ロイは本当無能だな」
「なまえもだろう?」
笑い合う。
この時間がすごい好き。
「あ、なまえ歩いて帰るんだよな?」
「え?…うん」
「傘があればよかったんだが…。家まで送ってやるよ」
「え!?」
思ってもない言葉
「ほら、だから早く帰るぞ」
「いいの?」
「あぁ、こんな雨の日に傘もささずに帰ったら風邪引くだろ」
「…ありがと」
ちょっと期待
ふとロイのカバンに目をやれば中には折り畳み傘が入ってるのが見えた
-END-
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