「本日より東方司令部に転属になったなまえ・みょうじです。階級は中佐。よろしくお願いします」

「…なまえ?」

「…ロイ!?」


10年ぶりくらいに見た、私の初恋の女性は軍人になっていた。


「大佐、こんなきれいな人にも手出したんすか?」

「最低ね…」

「まったくです」

「違う!!」


部下からの冷ややかな目を浴びながら否定する。


「本当、違うわよ。こいつ今じゃすっかり男前になってるけど昔は泣き虫でいつもあたしが…「言うなっ!!」」

「この大佐が泣き虫…」

「そうよ。いつもなまえちゃーんって泣いてたわ」

「…」


よみがえる暗い過去。
なまえにいつも助けてもらっていたがある意味で私は彼女にいじめられてた。

しかも彼女にその自覚はなかったであろう。


「もういいから、仕事に戻れ」

「はーい」

「今度大佐の小さい頃おしえてくださいね」

「えぇ、いいわよ」


本当に嫌になってきた。





仕事が終わって帰ろうとしたらなまえがいた。


「お、マスタング大佐やっと終わりましたか」

「あぁ…待ってたのか?」

「うん、久々だからしゃべりたいって思って。一緒帰ろ?」

「そうだな」


歩いて帰り始める。


「あの時さ、ロイの靴に毛虫入れた奴らぼこってそいつらの靴の中に芋虫いっぱい入れたっけ」

「そんなこともあったな」


その後、そのいじめっこたちがなまえだけじゃなく私にまで敬語になったのは内緒。


「あーんなちっちゃくて弱虫、泣き虫だったロイがこんなおっきくなっちゃったんだー。しかも『私』って…『僕』じゃないと違和感だなー」


なまえが立ち止まるから私も立ち止まる。
どうやら身長の差を確かめたかったらしい。
もちろん今では頭一つ分くらい私のほうが大きい。


「お前だって男勝りで身長だって私よりでかくて『俺』って言ってたのに今じゃ『あたし』なんてな」


なまえはふふっと笑う。
笑顔だけは昔から変わらない。


「しかもずいぶんかっこよくなったね」

「お前は昔から変わらず美人だ」

「お世辞はいいから」


そう言って彼女はまた歩き始める。


わかってないな


(お世辞じゃない)
(あんたに言われても説得力ないわよ)
(なんでだ?)
(女たらしなんでしょ。女だっだらみんなにそんなこと言うわけでしょ?)
(違うよ)
なまえだから…だよ



-END-




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