「もしもし!…あぁそうなんだ。ん、大丈夫だよ。仕事頑張ってね」
今日は久々にロイに会えると思ってたのに。
かかってきた電話は「今から行く」ではなく「残業があって今日は行けない」って内容だった。
ご飯は作ったけれど食べないで待っていた。
一人で食べる気にもなれなくてベッドへダイブする。
「ロイの馬鹿…」
『会えなくて寂しい』なんて素直な気持ちは言葉にできない。
言葉にしたところでロイの仕事が早く終わって会えるわけではないし、言われたらロイだってきっと困るだろう。
だから物分かりの良いふりをして、本当の思いは胸にしまっている。
わたしが我慢すれば良いだけの話なんだ。
ただ、それだけ。簡単な話だ。
***
「なまえ…なまえ」
「…ん?」
「毛布かけないで寝たら風邪引くだろ?あとご飯食べてろって言ったのにまだ食べてないだろ?風呂もまだか?」
「……ロイ?どうして?」
いつの間にか寝ていたみたいで心地良い声で目を覚ました。
目の前には今日来られないと言っていた恋人。
「思ってたより早く終わったんだ。だからなまえに会いたいと思ってね」
いつもどおりただいまのぎゅーをされたからわたしも腕を回してロイを抱きめる。
電話もしたんだけど、と言われて携帯に目をやれば確かに緑のランプが点滅していた。
「お疲れ様。ご飯食べた?食べてないならあっためるね」
上手く笑えてるだろうか?
ロイは頑張ってきた人だからね、しっかり労わなきゃ。
もごもごと動くけどロイは放してくれない。
「なまえ…」
「どうしたの?準備できないよ?」
「寂しかった」
あぁ、寂しかったのはわたしだけじゃないんだなって感じた。
勝手にわたし一人が寂しくて、ロイに会えなくて辛いんだって思ってたから。
「わたしも…寂しかったんだよ」
ポロポロと零れてくるのは涙。
「なまえがいるから仕事だって頑張れるんだ。でも寂しい思いをさせてすまない」
「それはしょうがないの。ロイの仕事が大変なのは知ってるし。でもね、我が儘を言うならもう少しいっぱい一緒にいたい。じゃないと少し不安になっちゃうから」
「なまえ!」
さて、と涙を拭ってご飯を準備しようと立ち上がったところ押し倒されて上に乗っかられた。
「ちょっと、ロイ。ご飯の準備出来ない」
「もう少しこのままでいさせてくれ」
重かったけどその重みも愛おしくて。
ロイも私と同じ気持ちでいてくれたなら私は1人で帰りを待ってるのも寂しくないな、ってそう思えた。
とびきり甘いのをお願い
(なまえ)
(んー?)
(今週末休みが取れたんだ、何かしたいことはあるか?)
(本当!?だったらロイと1日家にいてのんびりまったりくっついてたいな)
(お姫様の仰せのままに)
-END-
確かに恋だった様よりお借りしました。
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